lw´‐ _‐ノvまるで救いのようです
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
00:04:38.91 ID:yP8fVWDK0
シュールさんは、変な人だ。
何時だか僕がそう言うと、シュールさんはきゃらきゃらと笑って「そりゃあそうだよ」と言った。
「私は現実を飛び越えるんだ」とも言った。
それがシュールさんの名前と『シュールレアリスム』をかけた駄洒落だと言うのに気づくまで、僕は三時間を要した。
つまり、理解に三時間もかかるような駄洒落をさらりと言ってしまうのが、シュールさんと言う人だった。
( ・∀・)「シュールさん」
lw´‐ _‐ノv「何かね」
( ・∀・)「なに、聞いているの」
屋上の風に吹かれるシュールさんの、白く形の良い耳からこれまた白いコードが延びているのに気づいた僕は、真っ先にそう尋ねた。
コードの先をたどると、プリーツに皺一つないシュールさんのスカートのポケットへと続いている。
「ああ」とシュールさんは首を曲げた「ああ、これか」と。
lw´‐
_‐ノv「『楽しみを希う心』……ピアノ・レッスンって映画の曲らしいよ」
( ・∀・)「へぇ」
今度聞いてみよう、と僕はうなづく。
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
00:08:30.79 ID:mfpMoTJk0
lw´‐ _‐ノv「まぁ、観たことはないんだけどね……で、また何か用かい?」
( ・∀・)「ああ、うん。残念ながらまたなんだ」
そういって鞄のチャックを開けると、シュールさんは少しだけ名残惜しそうにイヤフォンを耳から引っこ抜いた。
カナル式のキャップまで白いそれがぷらぷらと風に揺れる。
僕は事ある事にシュールさんと仲が良いと壮語していたので、シュールさん関連の頼まれ事は大概僕の元へ舞い込んだ。
それらは例えば『委員会の集まりがあるから、来るように言って』だとか『図書館の督促状が来ているから、伝えて』だとかいう
取るに足らない事項が主だったけれど、シュールさんに校内から探し出して、そういったよしなし仕事を伝える度、僕はシュールさんのマネージャー
のような、彼女への門番のような優越感を感じていた。
シュールさんは、友達が少ない。
話してみれば少し変わっているが案外楽しい子だということを、皆が知ろうとしないためだ。
( ・∀・)「夏休み中、三者面談があるから、保護者の人と都合の良い日を書いて明日までに出してってさ」
lw´‐
_‐ノv「三者面談」
( ・∀・)「そう、三者面談」
言いながら、『シュールさん用ファイル』から丁寧に折り畳んだ三者面談への案内を手渡す。
スポーツ用に解放された屋上の風は強く、プリントはぺらぺらと翻った。
摘むようにして白磁の指でそれを受け取ったシュールさんは、太陽に透かすようにしてそれを見る。
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
00:15:19.26 ID:xFhIgUQC0
- ( ・∀・)「シュールさんって、家族とか居るの?」
lw´‐ _‐ノv「……君は私を何だと思っているのか、一度問いただすべきかな」
( ・∀・)「変な人だと思っているよ」
lw´‐ _‐ノv「変だよ、そりゃあ変だ、私は」
( ・∀・)「だって現実さえ飛び越える?」
lw´‐ _‐ノv「いつまでその発言を覚えている気かなぁ、君は」
呆れたように首を傾け、シュールさんはプリントを片手に腕を組んだ。「不発だったジョークを何時までも引っ張られるほど嫌なことってないぜ」と。
終業式の前日、午前授業で放課の学校はどこか浮き足立っていて、階下からひっくり返った笑い声が聞こえた。
「ほうらお前の後ろにも居るぜ、振り返ってみろよ!」わけわかんねぇよ、と眉を潜めたくなる。
( ・∀・)「いつまでも覚えてるよ。これをきっかけにシュールさんが心を開いてくれたと思ってるからね僕は」
lw´‐ _‐ノv「はやく忘れちゃえよ」
( ・∀・)「忘れないよ、これ僕とシュールさんの大切な思い出だからね」
lw´‐ _‐ノv「風の妖精が来るぞ」
ぎっぷりゃ、と意味不明な声を上げてシュールさんは両手を上げた。
そして其れを下ろして、風で顔に張り付いた黒くて長い髪を指で避ける。
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
00:21:58.17 ID:xFhIgUQC0
- lw´‐ _‐ノv「あにが」
( ・∀・)「へ?」
アニガ。
ドイツ語のような響きだ、と思った。舌の上でころころと転がるような語感だった。
その三文字を『兄』に変換するのに僕は二秒かける。
lw´‐ _‐ノv「あに、兄さんがね、一人。一緒に住んでいる」
( ・∀・)「……へぇ」
lw´‐
_‐ノv「二人暮しって奴かな。良く妹や他の兄さんとか、姉さんが訪ねてくるけどね」
( ・∀・)「一緒に住んでないの?」
lw´‐ _‐ノv「ああ、住んでないよ? だって結婚してるもの」
兄が、一人。それでもって二人暮らしとは、シュールさんも中々複雑な事情を抱えているのかもしれない。
しかしシュールさんは自分の不幸を鷹の首を取ったように自慢げに話す人間だっただろうか。
詳しく聞くべきなのか計りかねた僕は、興味のあるような無いような、あいまいな返事をした。
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
00:29:25.58 ID:xFhIgUQC0
- ( ・∀・)「そうなんだ……ええと、お母さんやお父さんは?」
僕がそう問うと質問の意味を図りかねたのか、シュールさんはかくりと顔を傾ける。
lw´‐
_‐ノv「うん? それってどういう……ああ、そうか。いや、言い方が悪かった。居るよ、死んだりなんてしないさ
うん、父さんだって毎日会ってる」
( ・∀・)「へえ」
では、お母さんは。
なんとなく聞いてはいけないような気がして、僕はそう頷いた。
そんな僕の躊躇いに気づいているのかいないのか、「聞いてくれよ」とシュールさんは薄く微笑む。
lw´‐
_‐ノv「兄さんは働いてなくてさ、家からも滅多に出ないんだ。ニートって奴だね」
( ・∀・)「……そういうのは、フォローしかねるんだけど」
lw´‐ _‐ノv「いや? フォローは良いよ。でね、兄さんは料理や掃除は得意なのに、洗濯は何でかぜんぜん出来ないんだよ
この前なんて無理にやろうとして、洗濯機を壊してね。姉さんに怒られていた」
( ・∀・)「……」
lw´‐
_‐ノv「それでもって、頭は良いのだけど、まともに学校に通っていなかったもんだからどうにも常識に欠ける。
どうしようも無い兄さんなんだ」
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
00:33:07.14 ID:xFhIgUQC0
- どうしようもないと言っている割にはシュールさんの顔は朗らかで、その『兄さん』の事を尊敬していたり、好きだったりするのが良く分かった。
シュールさんがこうも楽しそうに話すのは珍しく、僕は思わず茶々を入れたくなる。
( ・∀・)「シュールさん、随分お兄さんの事が好きなんだね」
lw´‐ _‐ノv「な」
シュールさんの緩んでいた頬が一瞬にして強ばった。
温い風が吹き抜けて、長いシュールさんの髪と僕の短い髪が掻き乱される。
僕の言葉に罰悪そうに暫く左下を睨んでいたシュールさんは、「そうだね」と呻くように言った。
lw´‐
_‐ノv「私は兄さんが大好きだよ。勿論、兄妹としてね。なんと言っても兄さんは、本当に良い兄さんだから」
( ・∀・)「ふぅん……シュールさんが其処まで人を誉めるなんて、珍しい」
lw´‐ _‐ノv「そうかい?」
( ・∀・)「そうだよ、シュールさん、僕を褒めてくれたことなんて全然無いじゃない。
連絡網回してるのだって僕なのにさ」
lw´‐ _‐ノv「ちゃんと礼は言ってるだろ。時々はジュースもおごってる。
大体、本人の前で褒めるなんて、そんなの、兄さんにだってしないよ」
( ・∀・)「よっぽど良いお兄さんなんだなぁ。会ってみたいよ」
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
00:35:44.03 ID:xFhIgUQC0
- 先ほどまではどうしようも無い、と言っていたのに、その翻り様は何なのだという揶揄を込めたのだが、
シュールさんは気づいて無いらしい。
ああ、良い兄さんだ、私には勿体無い、とシュールさんは豊かな胸を張った。
夏の日差しの下でもうすら青く、白い肌。汗一つ浮いていないその様子に、思わず人間かと疑いたくなる。
シュールさんは汗などかかないのかもしれない。
「私に汗腺なんてないよ」とシュールさんに言われたら僕は信じてしまいそうな気がする。
其れほどまでに、浮世からどこか飛び越えてしまったようなのがシュールさんという女の子だった。
僕が彼女に声をかけたのは、どうにもその雰囲気が恐ろしく思われたから。
親しくなって本当は普通の子だということを思い知りたかったから。
だというのに、親しくなればなるほど彼女は飛び越えてしまっているようだし、中途半端に人のようで、なんだか恐ろしい。
lw´‐
_‐ノv「ぬ、おい君、疑っているな」
( ・∀・)「え、そんな事無いよ」
lw´‐
_‐ノv「『そんなの無い』という顔をしていた」
( ・∀・)「どんな顔だよ、そりゃあ」
lw´‐
_‐ノv「何なら家に来て会ってみるかい? 相当良い兄さんなんだから」
( ・∀・)「……ああ、そうだね、行ってみようかな」
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
00:40:13.55 ID:xFhIgUQC0
僕はシュールさんの事が好きなのかもしれない。
さらさらと笹が風に流れるのを見ながら、僕は思った。
同級生の女の子の家を訪ねるなんていう経験は流石に何度もしていないが、その少ない経験の中でさえこんなにも緊張したことはなかった。
心臓がドクドクと脈打つ。冷や汗が背中を伝った。何だか膝が揺れる。
シュールさんの背中を、三歩後ろを歩く貞淑な妻のような気分になりながら追い、校門を出た。
家への連絡を忘れた、と途中で気づいたが、誰も気にする人なんて居ないということにも同時に気づき、僕の携帯電話の電源は切られたままである。
学校の西は所謂農業区と言う奴で、東の住居区に住んでいる僕には未開の地と言って構わなかった。
家が立ち並ぶ居住区とは大違いの田園風景が広がっている。
lw´‐ _‐ノv「此処、曲がるよ」
途中で幾らか間違っても修正が聞きそうな畦道ばかりを歩いていたかと思いきや、シュールさんは唐突に竹藪の中を指さした。
見れば、竹が払われてトンネルのような道が出来ている。
奥の方には赤い鳥居が見えた。
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
00:46:32.62 ID:xFhIgUQC0
lw´‐ _‐ノv「あれの奥が我が家。広いよ」
( ・∀・)「……神社?」
lw´‐
_‐ノv「うん、まぁ近いかな」
足下は色の抜けた笹で埋まり、ふかふかとしている。
シュールさんは慣れた足取りで竹の根を踏み越え「其処危ないよ」と僕に注意を促した。
竹藪の真ん中を通る形になっているその道は、酷く涼しく、背筋に滲んだ汗が冷えて鳥肌がたった。
囲まれて細長くなった空の色も、なんとなしに薄白い。
道の両端に、僕の腰ほどの石柱がぽつんぽつんと立ちだした。
見ると、石柱には『一二』と大きく彫り込まれている。
それを振り返りながら、シュールさんの後を追った。
lw´‐ _‐ノv「神道っていうのは、何でもかんでもを神様にするでしょう」
( ・∀・)「……ああ、八百万の神だっけ?」
次は『五〇』
lw´‐
_‐ノv「そう、人は七以上の数を沢山と捉えるだとか、そういうのが関係していそうなその『ヤオヨロズ』だ」
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
00:51:05.03 ID:xFhIgUQC0
何の話だろうと伺ってみれば、どうやら目線の遠く先に見える鳥居についての説明が貰えるらしい。
シュールさんは細い目をゆるりと此方に流す。
冷たい風が吹き抜けた。
『一〇』
ぞ
わ
り。
(;・∀・)「……っ」
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
00:53:03.30 ID:xFhIgUQC0
足の先。脹ら脛。太股。指。手のひら。股関節。腕。わき腹。二の腕。胸。肩。首。頬。
左半身を順繰りに撫でていく冷気に、肌が粟立つ。
止まりそうになる足に鞭を打ち、歩を進めた。
視界がぶれる。
違う。
これは、女の子の家を訪ねるための緊張なんかじゃ、ない。
けれど、そうでなかったら一体なんなのだろう?
『三』
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
00:58:53.57 ID:xFhIgUQC0
- lw´‐ _‐ノv「この国は、いろんな意味で拒絶しない。様々な宗教をかじって不可思議な年中行事を行うよね」
シュールさんは何でも無いのか、ひょいひょいと竹の根の上を跳ねるように歩いていく。
僕の寒気なんて知りもしないようだ。
当たり前だ。僕の感覚はあくまでシュールさんのものではないし、単なる家路で緊張する人なんていない。
(;・∀・)「ああ……そうだね」
lw´‐ _‐ノv「日本人は宗教をねじ曲げていると言っても良い」
僕はあまりその論が好きではない。勿論クリスマスは楽しくツリーを囲むし、バレンタインにチョコを貰えば嬉しい。
家に帰れば、神棚と仏壇が存在する部屋もある。
それでも、だからこそ裏腹だと感じるのかもしれなかった。
lw´‐
_‐ノv「それは兎も角ね、今大事なのは、拒絶をしないってことだ」
『一四』
シュールさんは肘を折りまげ、首にまとわりついた髪を払う。額に汗が滲んだ。
どうしてだろう、酷く気分が悪い。
シュールさんの言葉がくわんくゎんと頭蓋に反響する。揺れる。響く。
視界が妙に青かった。
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
01:02:32.34 ID:xFhIgUQC0
この感覚には覚えがある。
頭の中身が揺れる。
視界が狭く、妙に鮮やかに染まって、内部から脳みそが膨らんでいくような感覚。
(;・∀・)「……」
立ち眩みか、と僕は膝に手を突く。
そういえば昼ごはんは菓子パンを一つしか食べていない。食べ盛りにそれは少し辛かったのだろうか。
さっきから気分が悪いのは、空腹のせい。
そうに違いない。
シュールさんは細い足で跳ねるように、浮くように、するすると先へ進んでいく。
白い制服の背中が小さくなっていく、その様子が酷く幻想的で、待ってくれと声が上げられなかった。
lw´‐
_‐ノv「例えばね、河童っているだろ? 妖怪の。
あれは一説によると舟に乗ってやってきた異国の人のことを人外のものと思って付けられた名前らしいんだ
そんでもって河童っていうのは、水の神様の零落した姿だという。面白いよな」
(;・∀・)「おもし、ろい?」
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
01:05:39.92 ID:xFhIgUQC0
lw´‐ _‐ノv「よくわからないモノが入ってきても、それを神様として奉ってしまう」
くるり、と此方を振り返る。
その唇はゆるりと微笑んでいて、それが嫌に目に焼きつくように赤かった。
lw´‐ _‐ノv「だから、……って大丈夫かい? 随分酷い顔だぞ。お腹でもいたいの?」
(;・∀・)「いや、……うん。少しだけ、立ち眩みが」
lw´‐
_‐ノv「変な話をした所為で気分が悪くなったか? ごめん、悪気は無いんだ」
(;・∀・)「う、ううん、面白い話だったよ。続きは?」
lw´‐ _‐ノv「……」
本当はもう一文字だって聞きたくない心持ちだったが、半ば自棄糞になりながらそう言う。
額の汗を拭うと、腕に滲んだ汗と擦れあってぬるりと不快だった。シュールさんはこちらを伺うようにして、「いや、止めよう」と首を振る。
さっきまで日照りの下にいたもんな、と足を止めてしまった僕に寄り、膝に突いた手を引いた。
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
01:11:13.97 ID:xFhIgUQC0
lw´‐ _‐ノv「後百メートルばかしだから、どうにか我慢してくれ。なんならおんぶをしよっか?」
(;・∀・)「え、いや、良いよ。もう大分楽になったから」
lw´‐
_‐ノv「けど、倒れられたりしたら起こせる自信が無いし、そんなら初めから負ぶってた方が……」
(;・∀・)「いいってば」
シュールさんは不安げに何度もこちらを振り返ったけれど、僕はそれどころではなかった。
シュールさんの手は冷たく、白く細くて、僕が少し力を込めたらたやすく折れてしまいそうだ。
その人差し指と中指と親指が、僕の左手の指を握っている。
先ほどまでの気分の悪さは未だに胸のあたりにつかえていたが、僕の意識は全て手の先へと移っていた。
lw´‐
_‐ノv「ほら、もう直ぐだよ」
鳥居の直ぐ前にある石柱には『三八』と彫られていた。
鳥居の向こうに、石畳が広がっている。大きな建物は寺社のようにも見えた。
いや、鳥居の向こうにあるくらいなのだから、そう見えて当然だ。
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
01:14:28.46 ID:xFhIgUQC0
その前に、ひょろりと長いシルエットが立っている。箒を持って、どうやら掃除をしているようだった。
埃が舞わないように水が巻いてあるのか、生ぬるいような匂いがする。
彼はこちらに気付いたのか腕を二本ゆらりと振った。
ゆうらりと、ゆらゆらと揺れている。余っている手は風に揺られるようだった。
lw´‐ _‐ノv「兄さんだ」
隣でシュールさんが呟く。
(;・∀・)「……へえ、そうなんだ」
lw´‐
_‐ノv「お茶でも用意してくる。お前はゆっくり歩いて来い。
おーい兄さん! ちょっとこいつ支えてやってくれない?!」
シュールさんに呼びかけられ、そのシルエットの主がふらふらと安定感の無い形で歩み寄ってくる。
「なに?」と落ち着いた声が脳に直接落っこちるようだった。
その姿をきちんと視界へ入れる前に僕の視界はすとんと暗転したけれど、それは本当にただの貧血で、十分後にきちんと目覚めることが出来た。
- 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
01:28:05.19 ID:xFhIgUQC0
- ざあざあ、と雨が降っている。
夏によくある通り雨だ。冷たく突き刺さるような其れが降り出したのは、僕がシュールさんの家から出て十分後。
送っていくと着いてきたシュールさん達を伴って、僕は其の辺りの寂れたバス停に非難していた。
いまだに頭はがんがんと揺れているようだが、そんなものは気にならなかった。
そんなことよりも、
lw´‐
_‐ノv「むう、参ったな、これじゃあ送った私が帰れない。どころか、モララーさえも送れない」
(;・∀・)「……だから良いって、いったのに」
lw´‐ _‐ノv「いやでも、やっぱり君具合悪そうだもの。放っておいたら倒れそうだって」
(;・∀・)「大丈夫だよ、……ご飯、美味しかったし」
lw´‐
_‐ノv「ああ、兄さんのご飯は美味しいだろ? カレーなんか特に甘くて絶品なんだ
なぁ?」
(;・∀・)「甘いカレーなんてカレーじゃないよ」
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
01:33:06.21 ID:xFhIgUQC0
そんな会話をしながら、僕はシュールさんが好きなんだろうかと考えた。
恐らくシュールさんは僕のことを少なくともお兄さんと並ぶくらいは好いてくれている。僕も、そうだと思っていた。
好きなら、彼女がどんな人間であれ受け入れられる筈だ。
例えどんな人間であれ。
lw´‐
_‐ノv「何を言ってるんだよ、辛いカレーなんて食べれたもんじゃないだろ? そうだよな、父さん」
(;・∀・)「……」
例えどんな人間であれ。
けれど、信じられない
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
01:35:32.85 ID:xFhIgUQC0
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『一二』
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- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
01:37:01.12 ID:xFhIgUQC0
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『五〇』
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- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
01:38:06.45 ID:xFhIgUQC0
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『一〇』
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- 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
01:40:05.28 ID:xFhIgUQC0
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『三』
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- 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
01:40:52.30 ID:xFhIgUQC0
信じられない。信じられない。信じられない。信じられない。信じられない。信じられない。信じられない。
信じられない。信じられない。信じられない。信じられない。信じられない。信じられない。信じられない。
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『一四』
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- 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
01:42:29.42 ID:xFhIgUQC0
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『三八』
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- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
01:43:48.88 ID:xFhIgUQC0
けれど仰げとお前はいうのだ。
- 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
01:45:10.64 ID:xFhIgUQC0
放課後、ふらふらと廊下を歩く見慣れた後ろ姿を見つけた。通例の通り、寄っていく。
彼が私の事を好意的に思ってくれているように、私もまた彼の事を好意的に思っていた。
彼の、周りに囚われない生き方は、私には真似の出来ない偉大なものに思える。
lw´‐ _‐ノv「やぁ、モララー」
(;・∀・)「っうわぁ!」
lw´‐ _‐ノv「……?」
私が声をかけると、モララーは面白いくらいに肩を跳ね上げ、その手で両耳を覆った。
その横顔は酷く憔悴している。
昨日、私の家に来る途中にしていた顔そっくりだ。
(;・∀・)「あ、な、何だ、シュールさんか。……驚いた」
lw´‐ _‐ノv「見ればわかるよ。どうしたんだい?」
- 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
01:47:24.28 ID:xFhIgUQC0
ちょっと私を見たモララーは、すぐにふいと目を逸らした。
(;・∀・)「……ううん、ちょっと、気持ち悪い夢を、みたんだ」
lw´‐ _‐ノv「夢」
(;・∀・)「そう、アイハブアドリーム、ではない方の、夢」
キング牧師の口上を引っ張り出す辺りに余裕が伺えたが、まだモララーの顔は真っ白だった。
病人のような、と言うより、紙のようなという比喩の方が似合っている。
そういえば終了式で伺った時にこっくりこっくりと船を漕いでいるのを見た気がする。
起こしてやれば良かったかな、と今更ながら後悔した。ごめんなさいお父さん、私は未だ配慮が足りないようです。
父は優しいから許してくれるだろう。けれど、今は父に許してもらってもモララーの辛苦は消えない。
それが堪らなく歯痒かった。
(;・∀・)「特に今日は用は無いよ。……帰るから」
lw´‐ _‐ノv「あ、いや、ちょっと待って」
(;・∀・)「……?」
- 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
01:51:20.36 ID:xFhIgUQC0
lw´‐ _‐ノv「用事があるのかい? 無いなら、ちょっとつき合ってよ。何か話したい気分なんだ」
モララーの腕をつかんで、引き留める。
それをやつれた顔で見つめたモララーは「用は、無いけど」と足を止めた。
せめて今私が彼にしてやれる事はないか、と脳内をまさぐる。こういう時に出てくるのは、大概が兄の記憶だ。
兄は人を慰めたり、落ち着かせたりという点でとても優れている。
私の家族の多くが一度は兄の手によって安らかな眠りを提供されているのは間違いない。
ずっとずっと昔、恐ろしい夢に魘されていた私を揺り起こし、暖かいミルクを飲ませ、
歯磨きまでさせて寝かしつけた時の手際の良さといったらなかった。
('A`)『シュール、夢なんてのはさ』
そんな兄の言葉をお借りしてモララーの背中をなぜる。
私より広い背中は、随分弱々しい形に丸まっていた。
- 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
01:57:06.03 ID:xFhIgUQC0
lw´‐ _‐ノv「私に話してごらんよ。夢なんて言うのは、ひとに話したら大概馬鹿らしくなるぜ」
(;・∀・)「……」
モララーは、信じられないモノを必死になって信じようとするように、乾いた目で私を見つめた。
鬼気が迫るようなその瞳に萎縮しそうになるけれど、しっかりと向き合う。
恐ろしいものに囚われているときは、救いが必要なのだ。
(;・∀・)「僕はね、何時も通りに生活していたんだ」
ぽっかりと口を開けてモララーが言ったのが夢の内容なのだと気づくまで、少しの時間が必要だった。
(;・∀・)「朝起きて顔を洗って、っていう、普通の生活。でもね、何だか可笑しいんだ。
普通ならありえないってことを、平気で放っておいて、むしろ其れを慈しんでるみたいに」
例えば、とモララーは言いかけて、口を閉ざした。
思い出したくもないのか、眉根を寄せて顔をしかめる。結局言わない事にしたらしい。
- 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
02:06:49.35 ID:xFhIgUQC0
(;・∀・)「……それで、僕は周りの人たちの振る舞いがあんまりに見てられなくて、可笑しいって言いたくて
でも、言えないんだ。怖くて。変なことを言ったら、どんな風にされるか分かんなかったんだ」
lw´‐ _‐ノv「……怖かったのか」
(;・∀・)「そうだよ、夢だと気づいたら、」
其処まで言って、「いや」と頭を抱えた。
(;・∀・)「無理だ、こんなの。……いや違う、夢だ。夢なんだから」
lw´‐ _‐ノv「おい、大丈夫か」
私の言葉に応えたつもりなのかそうではないのか、モララーは首を振る。
放課になったばかりの廊下の人通りには目を見張るものがあるが、この廊下に限って言うとそれは例外だった。
校舎の一番奥まった場所にある廊下。階段もなければ出口も無い此処に好んで来る人間は少ない。
薄暗く、モララーが居なければ私だって通るのを避けたい場所だ。
モララーは自分の耳を押しつぶすようだった。
どうすればいい、と私は父に問いかけるが、心中の父は首を振るばかりだった。
- 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
02:07:49.32 ID:xFhIgUQC0
(;・∀・)「で、ね、どうやらその世界ではその狂ったようなのが当然らしいんだ。
あんな、――おぞましい」
モララーは唾棄するように言う。その行為に付いて言及するのも厭らしいとでも言うように。
その顔は酷く歪んでいて、私は首を絞められたような気分になった。
大概の事についてポジティブに捉える傾向のあるモララーにしては、酷くネガティブな表情だったのだ。
(;・∀・)「何にせよ、その世界ではあの行為はポピュラーで、だから、でも僕は怖くて、それを避けようとしたんだ」
lw´‐ _‐ノv「……人は、異端を排除する」
(;・∀・)「ああ、そうだ。深層心理でさえそれが分かっているっていうのに、僕はそれを排除しようとした
それは悲しそうで、ああでもあんな、こんなのってだって、」
それはまるで、現実の酷い失態を語るような声だった。
何を言えば彼を安心させてやれるだろう。それは夢なのですよと諭しても、納得しないような雰囲気があった。
お父さん、私は未熟です。友人を慰めることすら出来ません。私が彼に何を出来るのでしょうか。
兄と違って、私は人を思いやることが出来ない。
- 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
02:10:23.18 ID:xFhIgUQC0
lw´‐ _‐ノv「……その人それぞれの信じる常識っていうのがある。それは、信仰と何にも変わらないんだ。
君は君の常識という宗教を信仰してるに、過ぎない」
(;・∀・)「……うん」
lw´‐
_‐ノv「だから、でも、それってしょうがないことだろ?」
言ってから、これでは逆効果でしかないと気づく。何故私はこうも考え無しに話してしまうのか。
モララーは体の中身を吐き出したくて堪らないという顔をしていた。俯いて口に手を当て、今にもおう吐しそうに震えている。
ああ、ごめん、と謝ろうとした。なんだか私は泣きたくなる。
声を掛けようとモララーに向けて手を伸ばすと、ぐるりと大きな目が此方を向いた。
(;・∀・)「ああ、そうだ」
lw´‐ _‐ノv「え」
(;・∀・)「そうだ、そうだよ、シュールさん。違うものな。僕はシュールさんとは違う。違う世界に生きている。そうだろう?」
lw´‐ _‐ノv「え、え?」
- 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
02:12:33.00 ID:xFhIgUQC0
- 顔を上げたモララーは私の両腕を掴み、握りしめる。五本の指が二の腕に食い込み、ぴきりと痛んだ。
私を覗き込むモララーの目はぎらぎらと光っている。
私はモララーが恐ろしかった。
lw´‐
_‐ノv「ど、どうしたんだ。何だか、可笑しいぞ、お前」
(;・∀・)「可笑しいのは君だ。何でそんなものを貼り付けて、生きて生ける? 正気なら教えてくれよ。何で付いてくるんだ」
lw´‐ _‐ノv「ついてくる?」
(;・∀・)「ああそうだよ、今だって、ほら、其処に居る。シュールさんの後ろにも、僕の後ろにも」
lw´‐
_‐ノv「……モララー、何だか君、可笑しいよ」
lw´‐
_‐ノv「だって、父さんが後ろに居るのは、当然の常識じゃあないか」
私は右向きに後ろを振り返る。いつものとおり、兄さんと同じ六本の腕を揺らして父さんは私の頭を撫でた。
思わず其れに目を細めてから、私はモララーの後ろに目を遣った。何時もと同じように、けれど心配そうな父さんがモララーを覗き込んでいる。
私の言葉に、モララーはくしゃりと顔を歪めて崩れ落ちていた。
- 59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
02:15:05.93 ID:xFhIgUQC0
(;・∀・)「シュールさんは、変だ」
その言葉は、聞き慣れている。
それでもって、それには、私はこう答えなくてはならない。それは私とモララーの間の約束のようなものだった。
私とモララーの、大切な思い出の言葉だ。
はっきり言ってこの状況は異常で、だから私はこの言葉に日常への帰還を託していた。
lw´‐ _‐ノv「私達は変さ。現実さえ飛び越えてやるんだって」
lw´‐
_‐ノv「お前も、そうだろ?」
- 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
02:15:27.51 ID:ptYJRmqf0
■■■では■■■■と言う信仰対象が存在する。その姿は、俗に言う■■■と酷
似した■■腕、■つの頭を所持した人間だと言われている。驚くべき事にその■
■■■は実在する■■であり、その形質が受け継がれているのだそうだ。私が会
った■■■■は伝承通りの■■腕で、しかし■つ頭では無かった。
■■■■年、■月■日生まれ。男。青年の姿をしたその■■■■は温厚で、人に
好かれそうな雰囲気の持ち主だった。私は■■■の■■■■について探るべく彼
と親しくなろうと努力した。
■■■■様と呼ばれるのは所謂■■■■■■である。通常、■■■■■■という
のは短命であるが、彼は■■で、隙あらば世話役の"■"の目を盗んで私と共に家
を抜け出そうとした。"■"とは血縁の妹では無い。
■■■達はそれぞれお互いの事を"■""■""■""■"などの呼び名で呼び、まるで
家族のように振る舞っていた。そのうちに私も彼の"■"から"お■ちゃん"と呼ば
れ、嗚呼、私も■■■に■■■■■■■のだろうと悟った。もう■■戻りは出来
ないのだ。私に■は■■■。たとえ私が■■■■■■■■■、気にするひとは■
■■■■■■■■■■。
彼は私のことを■■■■と呼んでくれる。"■"ではない。
それは、まだ私が■■■に成り得ていないと言う■■なのだろうか?
この文章を彼に見られた。■■がこんな■■を書くのかと驚かれた。■■■■■
■■。
- 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
02:16:43.92 ID:ptYJRmqf0
- 右の後ろに居る。
■■■■■の■■■は正確に■■■■であるとは言い難い。彼はあくまで■■■
■の■■で、その形質を受け継いだ■■■でしかない。
■■■達は本当の■■■■サマは右の後ろに居ると言う。常に■■■の、彼の右
後ろに存在する■■■が■■■■サマ。
それだけではない。私の後ろにも■■■■サマが居るのだと言う。■■■■とは
■■■達による共通思想、■■に組みすることに寄って発生した■■だと思われ
る。
私にはまだ視認は不可能だが、長期に渡り■■が進んだ者、感受性の強い子供等
ならば視認も容易であろう。■■■達はそのおぞましい■■■■を拒絶しない。
■■■■とは彼らにとっての■■。それが自らの直ぐ側に■■■■というのは、
この上ない■■だと信じきっているのだ。
それ故に彼らは■■■■の為ならば■■■■■■■■■■■■■。
■■■■、■■■■、■■■■、■■■■。
それは全知全能の■では無い。ただの■■であり、■■■だ。
■■■は生殖機能を持たない。私は彼と生殖をした訳では無いが、■■的■■■
■。■■欠陥。■■■■。■■障害。それだけ並べ立てられれば■■も出来る。
ならば何故彼は存在するのか。■■■が次世代に■■しなければ、次の■■■も
生まれない。形質が■■■■■■■。
その答えは簡単に出た。■■■■だ。一番始めの、■■■■■。■■■■様はま
だ存在している。■■■の中に"■""■"と呼ばれる人間がいないのはその為だ。
■■■■サマである■■■が"■"。それと■■わる■■が"■"なのだ。
■■■しい。
私の右後ろにも■■■■はいるのだ。おぞましいことに。
私は■■■に関わるべきでは無かった。もう私は■■している。■■■■という
常識に。ただ気にかかるのは、"■"の□□□□。彼女が■■に戻ってくれる事を
私は祈るばかりだ。
でなければ彼女はそのうちに、
- 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
02:20:50.30 ID:ptYJRmqf0
- ( ・∀・)「兄さん、何書いてるの」
('A`)「うわっ、何だよ、居たんなら言えって」
( ・∀・)「今入ってきたんだよ。ご飯作るから手伝って欲しいんだけど」
('A`)「うん……まぁ、良いけど」
( ・∀・)「で、これは、何。落書き?」
('A`)「ああ、いいや、ええと」
( ・∀・)「あっ分かった、字の練習だな」
('A`)「……お前の中で俺がどういう風に認識されているのか、一度問い正さなきゃいけないよね」
( ・∀・)「あはは」
('A`)「で、手伝いって?」
( ・∀・)「うん、カレー焦げないようにかき混ぜといて欲しいんだけど」
('A`)「最近カレー率高くないか。手抜き?」
( ・∀・)「シュールさんと一緒にしないで欲しいんだけどな……」
- 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
02:22:22.73 ID:ptYJRmqf0
新しい"弟"の作るカレーは少々僕には辛く思われます 早く慣れねばなりません
それ以外は上手く遣っていけそうです
これも全て父さんのおかげです
シュールは、泣いて居りませんか
ただ、其れだけが心配で堪りません
- 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/09(日)
03:04:28.60 ID:ptYJRmqf0
- lw´‐ _‐ノvまるで救いのようです
END
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