( ^ω^)踏み込み過ぎたようです
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
01:35:41.21 ID:lDlbGhtr0
- ( ^ω^) カチ カチ
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは。
( ^ω^) カチ カチチ
はじめましての方もお久しぶりの方もいると思います。
( ^ω^) カタタ ッターン
このお話の主人公は多分僕、内藤ホライゾン
( ^ω^) ギシッ……
みんなからはブーンって呼ばれたりしてるような、平凡な男子高校生です。
( ^ω^)「……あー」
少し変わったことがあると言えば
( ^ω^)「……もう、朝日が見えるお」
オンラインゲームにのめりこみすぎていることでしょうか。
( ^ω^)踏み込み過ぎたようです
( ^ω^)「まあ、学校行くまで二時間は寝れるな」
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
01:37:57.21 ID:lDlbGhtr0
- 高校一年生の夏休み、あまりにも暇を持て余していた僕は
入学祝に買ってもらったパソコンをいじくりまわしていた。
( ^ω^)「どっかいいエロサイトねーかな」
当時僕はワンクリック詐欺や、掲示板荒らしに過剰に反応する程度の情報能力しか持っていなかったため
正直言って満足にパソコンを使える状態とは言い難いものだった。
そんなときに、友人から2chの存在を知らされ、専ブラまで勝手に導入された。
('A`)「ここだここ、ニュー速VIP」
( ^ω^)「2ちゃんねるって悪い人がいっぱいいるんじゃないのかお?」
(;'A`)「お前はいつの時代の人間だよ……」
( ^ω^)「お? ニュースとかでよく言われてたような気がするお」
('A`)「まぁ、いいけど……」
('A`)「とりあえずこれでパソコンで時間潰すのは出来ると思うぜ?」
( ^ω^)「おー……」
画面に表示されていたのは大量のスレッド、と呼ばれる掲示板。
そこは僕の全く知らない世界で、僕が引きずり込まれるには十分な世界だった。
(*^ω^)「wwwwおwwwwwwww」
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
01:40:08.51 ID:lDlbGhtr0
- ネタスレやSSスレ、アニメなどどんなジャンルのスレでもあった。
一週間程度は読んでいるだけだったが、徐々に書き込む量も増えていった。
( ^ω^)「えっと……Kってどこだっけ……」
まあ、こんなレベルだったが。
そんな時、一つのスレタイが目に入った。
[VIPでネトゲの頂点取ろうぜwwwwwwww]
( ^ω^)「……?」
ネトゲ。自分の一切知らなかった世界。
( ^ω^)「ドクオ、ネトゲって何だお」
('A`)「……オンラインゲーム」
眠そうな声でそれだけ答え、電話が切れる。
何かわからないことがあると僕は彼に聞く癖があった。よく怒りださなかったな、と今更ながら思う。
( ^ω^)「オンライン、ゲーム……」
とりあえずスレの内容を見てみることにした。
ほぼひとりのIDが真っ赤で保守を繰り返していたが、1には詳細が書かれていた。
( ^ω^)「無料なのかお……」
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
01:42:25.65 ID:lDlbGhtr0
- 無料、というキーワードに惹かれ、リンクのダウンロードページへと進み、気がつけば落としていた。
(;^ω^)「に、二時間もかかるのかお」
その間に先ほどのスレを読み進め、何をすればいいかを調べた。
そして寝た。
だってダウンロード開始したのが夜の十二時過ぎだったし。
翌朝、インストールが終了しチュートリアルをクリア、ついに僕はネトゲに足を踏み入れたのであった。
(*^ω^)
それからの夏休み、僕はずっとネトゲで過ごした。
(*^ω^)
夏休みだけではない。二学期も、三学期も、新年度の一学期もネトゲとともに過ごした。
(;^ω^)
そして一年後の夏休み直前、VIPギルドはサーバーの頂点に立った。
(;^ω^)「……ふぃー」
同時に、何人もの知り合いがネトゲを辞めた。
VIPでの目的が頂点を取ること。それを取ったからには続ける意味が無いというのが彼らの言い分だった。
それも当然であり仕方ないことだろう、と思っていた。
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
01:44:38.31 ID:lDlbGhtr0
- ( ^ω^)「……」
しかし、僕はどうも辞める気にならなかった。
一年近く続けていたのだ。愛着もそれなりに湧いていた。
とはいえギルドは解散。どこも行くあてが無い。
かといってソロでの活動はそれなりに寂しいものだ。
残党を当たってみたが、もともと数が少ないうえに僕はあまり良く思われていなかったらしく、歓迎されなかった。
そんなときだった。
頂点を取る数週間前に入った新規メンバー。
勝手もよくわからないうちに放り出されてしまった奴を見つけた。
ζ(゚ー゚;ζ
補助職の女性キャラ。
まあ、女性キャラ使う男なんか山ほどいるから別に下心があったわけではない。
だが、寂しかったのは少しあるだろう。
( ^ω^) カタタ カタ タン
boon:新規で来たんだっけ これからどうすんの?
dele:どうすればいいのかわかんない・・・><
( ^ω^)「……ネカマか?」 カタタ
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
01:46:50.26 ID:lDlbGhtr0
- boon:とりあえずギルドは解散したし、続けるならどっか探さないと
dele:え、そうなの?
boon:うん、もう目標無くなったって人が大半だからね。
dele:そっか、じゃあどうしようかな
boon:続けるつもりなの?
dele:せっかくダウンロードしたしね^^* 楽しみたいもん
boon:へぇ……
( ^ω^)「……」 カタ カタ
boon:じゃあこっちでギルド新しく作る?
dele:えー、いいの? ていうかあなたも続けるんだ?w
boon:続けるつもりだったけど仲間がいなかったからね
( ^ω^)「ひとりは、寂しいし」
高校のクラス変えのあと、ドクオとクラスが別れてしまい若干疎遠になっていたこともある。
何よりも、心の寄りどころであったネトゲのギルドが解散してしまったことが痛かったのかもしれない。
仲間を求めていた。
boon:だから、良かったらだけど。
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
01:48:58.87 ID:lDlbGhtr0
- 正直言って、誰でもよかった。
寂しさを紛らわせてほしかったんだ。
dele:いいよ、一緒にギルド作ろー!w
( ^ω^)「……」
boon:じゃあちょっと作ってくるから待ってて。
高校二年の夏休みは、ずっとデレと過ごした。
チャットをすべて鵜呑みにするのならば、二つ上の女性で、専門学校生。
しかしネカマであることも否定はできないし、自分もそう思っていた。
boon:どうせ二人なんだからキャラ作る必要なくね
dele:どういう意味?
( ^ω^)「あくまでキャラを貫く、と……」
それならそれで。
僕は別に気にすることは無かった。
いや、どうなのだろう。
そして夏休みが明け、しかし夏休み気分が抜けぬまま新学期に突入する。
( ^ω^)「……ん」
(;^ω^)「やべ、八時すぎてるお」
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
01:51:12.78 ID:lDlbGhtr0
- 狩りも常に二人で行っていたため、どちらかというと僕がデレに行動を合わせることが多かった。
デレはどちらかというと夜型で、夕方起きて朝寝るという生活を送っている。
それに合わせると言うことは、朝学校へ行き、夕方からネトゲをし、朝日が昇ったころに眠り
そして学校に行く直前に起きる、という無茶な生活を送ることになる。
当然学校では寝るだろう、とお思いだろうが、真面目なブーンで通っている僕にそれは許されない。
ばれないように眠るスキルがずいぶんと上達したとおもう。
(;^ω^)「ぎりぎりセーフ、だお」
( ・∀・)「良かったね、先生来る前で」
( ^ω^)「お、おはようモララー」
友人はそれなりにいる、はずだ。
しかし、僕の心はネトゲに傾いていた。そのため、一歩置いた付き合いをしているような気が自分でもする。
少しおかしいとは思うが、今のところ問題は起きていないしこれでも別に良いだろう。
そんな生活を送っていたある日だった。
dele:ねえ、ブーン
boon:ん?
dele:スカイプって知ってるー?
( ^ω^)「……?」
boon:いや、知らないなぁ
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
01:53:27.22 ID:lDlbGhtr0
- dele:じゃあ教えてあげる!
彼女が言うには、スカイプというのは要するに無料で電話が出来るソフトウェアとのことだった。
それがなんだ、と思い彼女の返答を待った。
dele:でさ、狩りとかのときチャットだと反応遅れるじゃん?
確かに、レベルも上がり狩場も酷になってきている。
コンマ一秒単位の操作が要求される程度ではある。
boon:まあ、確かにそうだね
dele:だからさ、これ使って話しながら狩りしようよ♪
( ^ω^)「……ふむ」 カタカタ
boon:別にいいけど、マイク持ってないから明日からでいい?
dele:うん、1000円以下で買えるから忘れないでね!
boon:おk、全財産使って買ってくる
dele:ちょwww
少し違う意味での下心もあった。
声を聞けば男か女かなんてすぐにわかるし。
そして、できれば女であって欲しいという若干の期待。
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
01:56:08.97 ID:lDlbGhtr0
- ( ^ω^)「スカイプ対応……これかお」
翌日の放課後、僕は駅前の電気屋に寄っていた。
件のヘッドセットとやらを買うためだ。
( ^ω^)「2980円……たっけえ
1000円以下のはどこだお」
すぐ隣にあるのになかなか目がいかないことってあるよね。
( ^ω^)「お、1980円のところ1480円ってのがあるお」
で、こういうお得感に弱いよね。
かくして僕はヘッドセットを手に入れた。
上機嫌で家に帰り、さっそくログイン。
boon:おいすー
dele:お、今日はいつもより遅かったね
boon:買い物行ってた。ヘッドセット買って来たよ
dele:お、忘れなかったんだねー偉いぞ☆
boon:バカにしてるだろwww
dele:全然ww じゃあ登録の方法教えるね
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
01:58:23.45 ID:lDlbGhtr0
- スカイプのアカウント登録を済ませ、コンタクトの交換も済ませた後。
でれ:じゃあかけるよー?
僕は凄く緊張していた。
(;^ω^)「えぇー……」
ぶーん:ちょっとまってwww
(;^ω^)「なんか怖いんだけど……」
でれ:やだ。かける
(;^ω^)「え、いや、ちょ」
着信 でれ
応答 拒否
なんてのが大きい音を立てながら画面に表示される。
当然のごとく焦る僕。
そしてつい押してしまった応答ボタン。
ヘッドホンから聞こえてきたのは
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:00:37.29 ID:lDlbGhtr0
ζ(゚ー゚*ζ「もっしもーし?」
とてもかわいらしい女の子の声でした。
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:02:46.64 ID:lDlbGhtr0
- ζ(゚ー゚;ζ「あれ? 聞こえてないかな?」
( ゚ω゚)「」
ζ(゚ー゚;ζ「ぶーん? きこえてない?」
( ゚ω゚)「お……」
ζ(゚ー゚*ζ「お、聞こえた」
ζ(^ー^*ζ「デレでーす 声でははじめましてだねー」
まるでどこかの声優のような、幼い声。
とてもかわいらしく、僕の心をつかむには十分だった。
(;^ω^)「こここっこおここここんにちはぶぶぶぶぶぶーんっでででです」
ζ(゚ー゚;ζ「ちょ、何テンパってるのw」
(;^ω^)「だだだって、女なんておもってなかったし」
ζ(゚、゚;ζ「それどーいう意味かな…… チャットでも女の子っぽくしてたのに」
(;^ω^)「ね、ネカマかなぁ、って」
ζ(゚ー゚;ζ「ひっどーい……」
(;^ω^)「ていうか女の人ってこういうゲームするもんなんだ……」
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:05:06.91 ID:lDlbGhtr0
- ζ(゚ー゚*ζ「キャラかわいいしねー」
(;^ω^)「あぁ、そう……」
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、せっかくだし狩りいこっか?」
( ^ω^)「お、そうするかお」
ζ(゚ー゚*ζ「え?」
( ^ω^)「お?」
ζ(^ー^*ζ「なにその話し方、おもしろーいww」
(;^ω^)「おー……」
ζ(゚ー゚*ζ「癖か何かなの? それとも方言?」
(;^ω^)「東京だから方言じゃないお まあ癖みたいなもんだお」
ζ(゚ー゚*ζ「え、東京なの? 都会いいなーぁ」
( ^ω^)「まあ23区外だから都会ではないけどね デレはどこなの?」
ζ(^ー^*ζ「当ててごらーんw」
会話は驚くほど弾んだ。
僕は彼女にどんどん惹かれていった。
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:07:32.06 ID:lDlbGhtr0
- 住んでいるところ。
勉強。
学校。
大学。
受験。
歌。
ニコニコ。
ゲーム。
彼女とはとても気が合い、話が合う。
話していてとても楽しい。
時間を忘れるほどだ。
(;^ω^)「あー、右! 右! 死ぬ!」
ζ(゚ー゚;ζ「わー! わああー!」
(;^ω^)「あー……」
ζ(゚ー゚;ζ「ごめん……」
そこそこ狩りもうまくいっていたんじゃないかな……。
そして、スカイプで話す習慣がついてから、一か月くらいすぎた頃。
少し、僕らの関係は変化を見せた。
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:09:44.40 ID:lDlbGhtr0
- いつものようにスカイプしながら深夜の狩り。
とはいえデレの方も学校が始まっていたため、そこまで遅い時間ではなく、日付が変わる直前程度。
慢性的な寝不足にも慣れ、チャットはほぼなくなり、通話のみでコミュニケーションを取っていた。
しかし、その時はデレの様子もおかしかった。
ζ(゚ー゚*ζ「なんか、疲れちゃったねー」
( ^ω^)「お? じゃあ今日はこの辺にしとくかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「んー……」
( ^ω^)「……?」
ζ(゚ー゚*ζ「狩りはやめよう」
( ^ω^)「お」
ζ(^ー^*ζ「お話しましょう」
(*^ω^)「お」
ζ(゚ー゚*ζ「一個気になったことがあるんだけどさ〜」
( ^ω^)「なんだお? なんでも聞いてくれお」
ζ(゚ー゚*ζ「ブーンってさ」
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:12:08.42 ID:lDlbGhtr0
「童貞?」
- 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:14:17.45 ID:lDlbGhtr0
- 正直いって何言ってんのかと思った。
こう言うの女の子が聞くのってどうなの、って思ったし
同時にどう答えればいいのかわからなかった。
ネタっぽく「どどどど童貞ちゃうわ!」とでも言えば良かったのか
なんて考えながら「あう」「う」みたいな声は出ていたらしく
ζ(゚ー゚*ζ「その反応、ずばりチェリーですね」
と断定された。
その通りですとも。
(;^ω^)「……わるいかお」
ζ(゚ー゚*ζ「ぜーんぜん?」
ζ(^ー^*ζ「あたしもしたことないしね」
(;^ω^)「っお……?」
このとき僕は彼女を完全に信用していた。
だからこの発言も鵜呑みにした。
もちろん後にこの発言の正当性を確かめることは無い。
ζ(゚ー゚*ζ「ねぇ……」
この時の彼女の声はとても艶っぽくて。
とても愛おしくて。
彼女に惹かれていた僕は。
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:16:37.09 ID:lDlbGhtr0
- ζ(゚ー゚*ζ「しよっか」
(;^ω^)「どう……や……」
ζ(゚ー゚*ζ「お話しながら、ふたりで」
(;^ω^)「あ……」
ζ(゚ー゚*ζ「……いや?」
もちろん、二つ返事でOKした。
据え膳食わぬは何とやら、なんて脳内では自分に言い訳して。
翌日、僕は初めて学校をサボった。
その日は一日中彼女と通話をつないでいた。
昨夜のこともあり、僕は完全に舞い上がっていた。
同時に、自分の気持ちを確信した。
僕は、デレが好きだ。
今までに味わったことのないこの気持ち。
胸から全身へとかけめぐる電流のような感覚。
初恋だった。
- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:18:48.12 ID:lDlbGhtr0
- 住んでいる場所が遠いことも知っている。
だが別に会えなくても良い。
気持ちが繋がっていれば、それでいい。
( ^ω^)「デレ」
だから、僕は自分の気持ちを伝えることにした。
デレの気持ちを聞くことにした。
ζ(゚ー゚*ζ「なぁに?」
( ^ω^)「話したいことが、ありますお」
ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの、いきなり改まって」
( ^ω^)「ぼくは」
「あなたが」
「デレが」
「好きで」
- 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:21:27.34 ID:lDlbGhtr0
- 「それ以上言わないで」
その決意は、冷たい言葉で遮られた。
拒絶? 拒否? 嫌悪?
一瞬で頭は混乱した。
ζ(゚ー゚*ζ「今それを言われたくないの」
「ごめん」
( ω )「……わかったお」
ζ( ー ζ「……ごめん」
彼女の意図が何だったのかわからない。
だが、しかし。
僕が彼女のことを思っているのと同じくらい、彼女が僕のことを思っている、なんてことは
ありえないようだ。
それから。
僕は彼女に好かれるために最大限の努力をした。
メールも、チャットも欠かさず。
- 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:23:41.88 ID:lDlbGhtr0
- 彼女の言うことには何でも従った。
ζ(^ー^*ζ「しよ?」
と言われればいくらでも、何時まででも付き合った。
ζ(゚、゚*ζ「あの装備かわいいなあ……」
と言われれば二日以内には入手し、プレゼントした。
彼女に少しでも好かれるよう、
彼女と少しでも近づけるよう頑張った。
そんなある日だった。
ζ(゚ー゚*ζ「冬休みだしさ、ギルドの人増やしてみない?」
今まで二人だけで過ごしてきたギルド。
それを彼女は一新したいと言った。
( ^ω^)「……うーん」
二人で活動してきたのは寂しかったから。
もしあの頃と同じ気持ちだったなら、人数が多くなることは歓迎することだっただろう。
しかし、今は嫌だ。
二人のギルド。二人の世界に、他人を侵入させたくはない。
しかし。ほかならぬ彼女の提案だ。
- 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:25:58.03 ID:lDlbGhtr0
- ( ^ω^)「いいね、新規さんの勧誘頑張るかお」
ζ(^ー^*ζ「うん!」
冬休みということも有り、ギルド未所属の人は山ほどいた。
なのでいわゆる入れ食いと言える状況だっただろう。
あっという間にギルドは30人を超えた。
そして、冬休みが終わってからはたった5人になった。
ζ(゚、゚*ζ「むー……」
(;^ω^)「ま、こんなもんだおねー」
そう、こんなもんなのだ。
暇つぶしにやるのがネトゲ。
暇が無くなればやめるのが当然であった。
しかしそれでも僕らのほかに3人が残ってくれた。
少し嬉しい気持ちもあった。
mona:ブーンさんちょっと手伝ってー
boon:何を?
久々にチャットもすることになった。
今まで二人だけで更にスカイプが中心だったのだから、久々の文字でのやりとりは新鮮味があり、
少し楽しかったのもある。
- 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:28:36.76 ID:lDlbGhtr0
- 同時に懸念も増えた。
(;^ω^)「ふぃー、疲れた」
学校から帰宅して、ゲームにログインすると
dele:あははwww
mona:wwwww
楽しそうにチャットしている彼女が目に入る。
( ^ω^)「……」
( ^ω^) カタ タタン
ぶーん:ただいま。通話かけていい?
でれ:お、おかえりーwおつかれさま いいよー
( ^ω^) トゥー トゥー
ζ(゚ー゚*ζ「もっしもーし 学校お疲れー」
( ^ω^)「お、ただいま」
何話してたの? とも聞けない。
彼女に必要以上に干渉することは、嫌われかねないからだ。
- 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:31:43.64 ID:lDlbGhtr0
- ( ^ω^)「今日はどこいくお?」
ζ(゚、゚*ζ「んー……モナさんが装備たりないっていってるし材料集めとか?」
( ^ω^)「お、そうするかお」
基本的に彼女に合わせる。それが僕のスタイルだった。
機嫌を損ねることは無いし、これなら彼女も僕を信頼してくれるはず。
そして徐々に僕に気を向けてくれるはず。
本気で、そう信じていた。
しかしこんな儚い理想は、簡単に崩れさる。
「ねえブーン」
「あたしさ」
「人を好きになっちゃった、かもしれない」
- 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:33:51.91 ID:lDlbGhtr0
- ( ^ω^)「……」
どう返答するべきかわからなかった。
しかし頭の中にはっきりしていたこと。
その好きになった人ってのが自分だと本気で信じていたのだ。
だからこの時はまだ、僕は冷静だった。
( ^ω^)「……誰を?」
同時に感慨深いものも感じていた。
ようやく自分の思い描いていたモノが現実になった、と。
しかし、現実はそうではない。
「……モナさん」
_, 、_
(;^ω^)「はあ?」
人生で一番素っ頓狂な声を上げた瞬間である。
そして完全に思考停止。
彼女が何か言っているのを右から左に聞き流し、僕は
( ;ω;)
マイクを切って泣きじゃくっていた。
一体どこを間違えたのか。何がいけなかったのか。
自問自答を繰り返すが答えは見当たらない。
- 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:36:03.34 ID:lDlbGhtr0
- そこで僕は更にポジティブに考えることにした。
いや、ポジティブかどうかは知らないけど。
要するに、彼女のモナに向かっている感情のベクトルを僕に向ければいいのだ。
モナが行っている以上のことを僕がすれば良い、簡単なこと。
だが。
ζ(^ー^*ζ「今日モナさんがねー」
ζ(゚、゚*ζ「でね、そしたらモナさんってば」
ζ(゚ー゚#ζ「ひどいんだよ、モナさん」
正直言ってこの内容の会話は苦痛以外の何物でもありません。
この人もしかして、僕が以前に告白しようとしたこと忘れてるのかな、なんて思ったりしました。
( ^ω^)「ねぇ、デレ」
ζ(゚ー゚*ζ「ん?」
( ^ω^)「……えっと」
「その……」
「モナさんとスカイプとかもしてるの?」
- 64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:38:14.35 ID:lDlbGhtr0
- 最大の意気地なし且つとんでもないことを言ってくれましたこの口は。
更なる苦痛が僕を襲うことになります。
ζ(^ー^*ζ「モナさんすっごく良い声だったー♪」
( ω )「……そう」
昼間はモナさんと会話し、夕方からは僕と会話。
そんなことをデレは平然とこなしているようでした。
彼女の口から出るのはモナモナモナモナ。
僕は相槌を打つこと程度しかできません。
あとはたまに性欲処理。
彼女にとって僕は何なのだろうか。
そんなことを考え出したある日。
ζ(^ー^*ζ「モラさんと付き合うことになっちゃった」
唐突に彼女はこう言いました。
( ω )「ッ!」
後にも先にも、彼女に対して感情をすべてぶちまけたのはこれが初めてでした。
泣いて喚いて。怒って泣いて。
ほぼ泣いてましたけど。
( ;ω;)「僕は、僕はこんなにデレが好きなんだお!?」
( ;ω;)「なんだってしたのに! どうして僕じゃなくてあいつなんだお!」
- 67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:40:54.89 ID:lDlbGhtr0
- ( ;ω;)「僕の方があいつなんかよりデレを愛してるお!」
( ;ω;)「なんで、なんでそれをわかってくれないんだお!!」
支離滅裂だったでしょう。
そのくらい必死でした。
この現実が受け入れられなかった。
夢なら全部覚めてほしい。
ζ( ー ζ「……ごめんね」
僕の話を聞いて彼女が最初に口を開き言ったのは、謝罪。
「ブーンの気持ちはわかってた」
「でも、あたしはあなたを友達としてしか見れなかったの」
「どんなに頑張っても、それは変わらなかった」
「そういう中途半端なのって、良くないと思ったから」
( ;ω;)「……」グス
「それは一生変わらないのかお?」
「これから先も、ずっとなのかお」
「それとも、まだ」
- 70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:43:12.40 ID:lDlbGhtr0
─────まだ可能性はあるんですか。
わかんない──────
( ;ω;)「……」
言葉の裏を読むのに疲れました。
なら、言葉通りとってやろうじゃないか。
( ;ω;)「……まだ」
「好きでいさせてください」
「あなたと一緒に、いさせてください」
わからないなら、わからせてみましょう。
考えて見てもらいましょう。
「……うん」
「いいよ、ブーンがそれでいいなら」
- 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:45:26.17 ID:lDlbGhtr0
- 僕らの新しい関係が始まりました。
彼女はモナを優先するようになりました。
でも僕はそれを妨害したりはしません。
妬むことはありました。
どうせネットでの付き合いなんかすぐに……なんて考えもしました。
すぐに自分に跳ね返ることに気づいてやめました。
でも、そんな関係が長く続くはずもなく。
ζ(゚ー゚;ζ「ブーン」
( ^ω^)「お?」
ζ(゚、゚;ζ「ごめん
怒られた」
( ^ω^)「……え?」
ζ(゚ー゚;ζ「モナちゃんにブーンと話してるって言ったら怒られちゃった」
(;^ω^)「……」
ζ(゚ー゚;ζ「俺がいるのに、って」
(;^ω^)「……」
(;^ω^)「内緒にしておけば……」
最低だった。
- 76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:48:02.23 ID:lDlbGhtr0
- しかしこれはなかなかうまく行った。
要するに彼がログアウトした後に話せば一切バレないのだから。
しかし時間は当然以前以上に遅くなる。
日付が変わることは勿論、一時や二時にさえなることさえあった。
そしてその時間となると当然テンションは深夜。
会話内容は主に性欲処理。
そんな状況でも僕は幸せだった。
彼女と一緒の時間を過ごすことが出来る。
それだけで幸せだった。
そんな時、少し事件が起こった。
午後九時過ぎ。いつもよりもはるかに早い時間に彼女から連絡が飛んできた。
でれ:ぶーん
でれ:通話かけていい?
いつもよりチャットにも覇気が無い。
何かあったのだろうか、と思ってすぐに応答する。
ぶーん:いいよー
すぐに甲高い着信音を立てる。
そしてヘッドホンから聞こえてきたのは
- 77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:50:12.96 ID:lDlbGhtr0
- 「ひぐ……えぐ……」
泣いている彼女の声だった。
(;゚ω゚)「えっ……」
流石にこれは予想外。
どういう対応をすればいいのやら。
(;^ω^)「えっと……何かあったのかお……」
このくらいの対応しかできないのが童貞ってもんよ。
でも原因を聞かない限り対策を立てられないし、何を言ってみようもない。
ζ(;ー;ζ「……モナちゃんと喧嘩したぁ」
(;^ω^)
どうしよう……。
詳しく聞いてみると、主観が彼女にあるにせよどうやら悪いのはモナ。
ついでに言うと原因は僕ではないようですこし安心。
そして、なんとなく怒りが湧いてくるのも必然。
(#^ω^)
僕がどんなに頑張っても手に入らないデレを自分のものにしておきながら
どんな不満があって彼女を責めると言うのだろうか。ふざけるんじゃねぇ。
- 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:52:48.31 ID:lDlbGhtr0
- そんな、今思うと理不尽な怒りを掲げて彼女と会話を続けた。
彼女もずいぶん不満が溜まっていたようで、その時の会話はずっと愚痴だった。
そしてその不満を聞く度に。僕の奥底の怒りは大きくなっていった。
( ^ω^)
やっぱり、彼女と一緒にいるべきはモナではない。
僕の方こそ、彼女にふさわしいんだ。
( ^ω^)
モナが彼女を苦しめるというのなら、僕がモナを彼女から取り除かないと。
彼女が苦しむのを僕は見過ごすわけにはいかない。
(#^ω^)
boon:モナ、wisおくるよ
mona:ん、おk
- 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:54:58.06 ID:lDlbGhtr0
- ─────
──
─
mona:なんでそんなことをお前に言われなきゃなんないの?
boon:デレとお前やっぱりあわねーよ
mona:何様のつもり?
boon:とにかくこれ以上デレを苦しませるなら消えろクズ
mona:ていうか何で知ってんの? もうお前とデレで話してないはずだよね
boon:関係ねーよ とりあえずギルドは追放しとくからな
mona:勝手にしろよ あとはデレに聞く
boon:ふざけんな死ね
mona:とにかくこれは俺らの問題 お前に口出されることじゃない
monaさんが対話を拒否しました。
( ^ω^)「……」 カチ カチ
monaさんをギルドから追放しました。
- 83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:57:26.71 ID:lDlbGhtr0
- それから30分くらいした後。
deleさんがギルドを脱退しました。
(;゚ω゚)「ッ!?」
カチ カチ
発信 でれ
(;^ω^)「な、なんで脱退したんだお……」
「……」
(;^ω^)「何か怒らせたかお……」
「……」
(;^ω^)「モナのことなら、もう大丈夫だお?」
「……」
(;^ω^)「ちゃんと言って追放したし……」
「……ばか」
(;^ω^)「……え」
「……あたしはモナが好きなの」
- 86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
02:59:38.39 ID:lDlbGhtr0
- (;^ω^)「で、でも昨日」
「……喧嘩しても好きなもんは好きなんだよ」
(;^ω^)「あんなにモナのこと」
「……それでも好きなの」
( ^ω^)「……」
「ごめんね」
( ^ω^)「……」
「ブーンの気持ちはうれしいけど」
「やっぱり答えられない」
「これまでも、これからもずっと」
( ^ω^)「……ふざけ」
「ごめん、これは確定」
「何言われても、変わること無いとおもう」
( ^ω^)「じゃあ……」
「うん」
- 87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
03:02:29.75 ID:lDlbGhtr0
- 「 も う 連 絡 し て こ な い で 」
「すっぱり切った方がお互いの為だと思う」
「今までほんとに楽しかった」
「ありがとう」
「じゃあね、ブーン」
「さよなら」
通話が切断しました
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「……なんだお」
( ^ω^)「……なんなんだお」
( ;ω;)「わっけわかんねえお……」
( ;ω;)「何が悪かったんだお……」
( ;ω;)「僕の、何が」
( ;ω;)「ちくしょう……」
- 91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火)
03:04:51.67 ID:lDlbGhtr0
- ( ω ) カチ カチ
その後、ギルドは解散。
僕もboonのキャラを捨て、新しく別のサーバーにキャラを作り遊んでいる。
もはや二年ちょっと。習慣として続けているゲームは辞められるものではない。
( ω ) カチ カチカチ
一つ違うことがあると言えば、ソロでゲームをしているということだ。
ギルドやチームには一切所属しない。
寂しい? と聞かれたら答えはyesだ。
しかし、もうあんな思いはしたくない。
人を信じて人を好きになりたくない。
傷つくのが怖い。
臆病者とでも何とでも言え。
ネトゲに本気になったのが間違いだと言われても否定できない。
わかってる。何もかも全部。
その結果がこれだから。
( ω ) カチ...
もう、何も考えたくない。
( ω ) ギシッ...
( ω )「……死にてぇ」
踏み込み過ぎたようです 完
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