('A`) ドクオはレイヴンのようです


1 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 21:38:47.87 ID:4VijAKhF0

No more cry boy cry time struck to you

―――少年よ、涙を止めて嘆きの時を打ち払え。

shining get for you again!

―――栄光をその手に再び掴むのだ。

shall I to coming out?

―――陽の当る所へ導いてやろうか?

call me call me to your glow

―――君の成長が私を呼び覚ます。

2 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 21:41:43.33 ID:4VijAKhF0

第一層第二都市区。


多数のビルが立ち並ぶ900万平方Kmにも及ぶ区域だ。

高速道路はその上をいき、都市を一周出来るようになっていて、
区画内を容易に移動できるようになっていた。

今この区画を彩る物は輝かしい街明かりであり、空は暗い。

暗き空。光の無い夜空を飛行機が切っていく。

ジェットエンジンによって作り出されていく煙は尾を引いていき、
鈍い駆動音を響かせて空を震わせていた。
その身はでっぷりと大きく、巨大な物を運輸するのに扱われるものだ。

AC用輸送機。

第二都市区画へ到達したそれは、ジェット音とは別の音を二つ生んでいく。

『作戦領域に到達。ACを降下する』

輸送機の尻に設けられたハッチが降ろされ、それが姿を露わにする。

10m程の人形をしたそれらは、一歩を踏み出していくと真っ直ぐに落下していき、
高所から5tを超える重量物が落ちてきたことで強力な衝撃が生じるが、
ACの脚が曲げられ、アクチュエーターが稼働することでそれは緩和された。

3 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 21:45:16.21 ID:4VijAKhF0

重量のバランスを上体操作で整え、二機のACは目前の敵を捉えていく。

逆くの字に折れた足の生えた、二足歩行戦車型MT。

レーザー銃と小型ミサイルで武装したCR−MT77M
―――クレスト社製のそれが、ACの前方に立つ。

その背後にはもう一機が控えており、レーダーにはもう十四機の姿が捉えられている。

ACのパイロットは機内でその姿を確認すると、

('A`) 「作戦を開始する」

無線を使用して"試験官"へとそう告げた。

"AC"――――アーマードコア。

目的に沿ってパーツを機体の核であるコアに組み上げていくことで、
どのような状況下での戦闘を可能とする、汎用性の高い、
最強の人型機動兵器。

それを操る傭兵"レイヴン"となる為の試験が今、開始された。


 
5 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 21:48:26.75 ID:4VijAKhF0


        ('A`) ドクオはレイヴンのようです



          MISSION1.レイヴン試験



 
7 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 21:50:52.34 ID:4VijAKhF0

******

試験官の声がスピーカーから発される。

HMD(ヘッドマウントディスプレイ)から鼓膜へとそれは突き刺さり、
緊張しきった俺の脳を揺さぶった。

『試験開始。このミッションを達成した時、
 君達は"VIP"に登録され、レイヴンとして認められる』

『このチャンスに二度目はない。失敗する時は死ぬ時だ』

『諸君の奮闘を期待する』

二度目はない。

失敗すれば死ぬ。

受ける前から覚悟していたことが現実としてぶち当たることで、
俺の緊張感は最高潮に達していた。

だが、HMDの画面には既に敵が映っている。

逆関節型MT。訓練で何度も相手をしたことのある機体だ。
クレスト社製の安価で頑強なそれは、こちらを捉えている。


10 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 21:53:45.36 ID:4VijAKhF0

画面にLOCKと警告文が表示されているので、何時撃たれても可笑しくはない。

敵と相対した事実が、煮詰まりきった脳みそに突き刺さり、
それが今まで受け続けてきた訓練の記憶を揺り動かしたのか、
身体は自然と動き始めていた。

左のブーストペダルを浅く踏み込み、ブースタを起動する。

同時に右のフットペダルを踏めば機体は跳躍していき、
コアの背部に備えられた、二つのブースタが火を吹くと身を持ちあげていく。

そのまま重量操作で斜め右へと跳ぶと、敵MTのミサイルが飛来する。
コア右側を抉るように向かってきたそれを、
ブースタが生んだ慣性力を活かし、上体バランスを左に崩すことで回避。

空中で浮き上がったACが突如として身を左に振ることで、
発射されたミサイルは明後日の方角へと飛んでいく。

それよりも早く、武器をライフルからミサイルへと切り替えていた俺は、
回避動作と同時に敵MTをロックオンサイトに収めていた。

ロック完了まで、後、3、2―――ターゲットマーカーが赤く変色した途端、
すぐさま俺は操縦桿のトリガーを引いた。MTは後退を始めるが、遅い。
左肩部に装備されたCR−WR69Mからミサイルは発射される。

小型ミサイルは夜空に白い尾を引いて敵へと襲いかかり、
MTの頭部を粉砕し、破片と爆発を撒き散らした。

11 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 21:55:25.60 ID:4VijAKhF0
しかし、大破には至らない。

背後に控えていたMTがバックアップに回り、
被弾したMTが姿勢制御を行うより早く後退しようとするが、やはり遅い。

足を一歩踏み出そうとしていた時には、既にもう一機のACが接近していた。

間合いは零距離。俺と同じ機体のそれは、
エネルギーの刀身を左腕から出現させ、大きく一閃することでMTの装甲を断ち、
ブレードを食らったMTは火花と破片を散らして爆散していった。

撃破と同時、ACは次の敵を捉える。

( ^ω^) 『一機撃破』

ホライゾンの子供のような高い声が俺にそう告げ、敵に再び向かっていく。

……突出しすぎだ。そう思うが、ならば俺がサポートに回ればいい話だと、
瞬時に頭を切り替え、ブースタを吹かせて前進する。

12 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 21:57:27.40 ID:4VijAKhF0

ホライゾンのACの背後に付けていく形となり、奴の動きに従っていく。

相手はクレスト社製のMTで、装甲は頑強だ。
こちらはACとはいっても、パイロットの俺達はレイヴンの卵といった腕で、
長期戦になればダメージが蓄積し、撃破される可能性がある。

武装の中で一番攻撃力の高い、ブレードを使用すればほぼ一撃で敵は倒せて、
ダメージを抑えられる。最も、無理に近づけば余計にダメージを受けてしまう可能性もある。

が、ホライゾンはMTに接近し、更に距離を詰める。

レーザー砲がACを捉えて発射されようとするが、
俺がブーンの背後から飛び出し、ライフル弾を浴びせてやることで、
MTはこちらへと照準を向け直す。

LOCK。HMDにその文字が浮かぶが、
次の瞬間にMTは真っ二つに切り裂かれて倒れていった。

13 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 21:58:31.44 ID:4VijAKhF0

( ^ω^) 『二機撃破』

再び告げられた言葉に、安堵感を覚える。
上手くいっている。そう確信出来る。

('A`) 『順調だな』

HMDのマイクに声を浴びせ、ホライゾンへと繋げる。

( ^ω^) 『おっおっお、独男と一緒で良かったお』

笑みで返って来た言葉に、俺は再び安堵する。
画面の右端に映るレーダーにはまだ12もの機影が残っているが、
こいつとなら問題はないだろう。

こちらを取り囲もうとするMT部隊を確認し、ホライゾンに言う。

('A`) 『まだ始まったばかりだ、抜かるなよ』

( ^ω^) 『了解だお。西側の展開が僅かに遅れてる、そっちに向かうお』

ホライゾン機がビルの裏を回り、その先にいたMTを斬り捨てながら進んでいき、
俺はそれについて都市区の西方面へと向かっていった。



 
15 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:00:32.85 ID:4VijAKhF0

******

無骨なシルエットをした中量級二脚のACが二機、第二都市区を行く。

右腕にライフル、左腕にブレード、
左肩にミサイルと右肩にレーダーを装備したその二機は、
MTの大群へと立ち向かっていく。

包囲網を完成させつつあるそれらの、西側へと切り込む二機。

数は三。隊形を組んでいたMT三機は、
扇状に独男とホライゾンを向かえ、レーザーとミサイルを浴びせた。
二機のACは左右に分かれ、ミサイルを避けると反撃にミサイルを見舞う。

左側に位置していたMTに二発のミサイルが被弾し、炎に飲まれて倒れていく。

そのまま進路を左に取ったホライゾンは、先程のMTの傍に立っていたMTに食らいつく。
直線的な動きを取る彼のACは、放たれたレーザーを避けられなかった。
宙に青い線が走り、鼓膜を射抜く鋭い音が立つと、ACの左腕が突かれてしまう。

分厚い装甲板に焼け跡が出来るが、大したダメージではない。
しかし、もう一、二撃と積み重ねられれば、流石にACと言えども無視は出来ない。

ホライゾンは別機のレーザーを受けてしまうが、構わずに目前のMTを斬り捨てた。

爆散し、炎が二つ吹き上がった。
黒煙が棚引き、視界が開けると、ホライゾンのHMDには独男機が映った。



 
17 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:03:04.04 ID:4VijAKhF0
三機撃破。

二人はそのまま道路を抜けていき、レーダーを確認。

北東にMTが三機、東に四機、南東に二機。
ビルを通り過ぎていくとその背後にはMTがいた。

独男はライフルを放ち、ホライゾンもそれに重ねて放つ。
ホライゾン機が先をいき、独男は旋回して裏へ回っていく。

銃撃を浴びせられたMTは装甲を抉られ、足をやられる。

動けなくなったMTを接近したホライゾンがブレードで切り捨てる。

ブォン。鈍く唸りを上げたブレードが橙色に輝き、
MTは動力炉を焼き切られて爆発した。
轟音が響き、ホライゾンの背後にMTが現れる。

すかさずミサイルが放たれてACへと殺到する。
着弾するまでそれほどの時間はかからない。

しかし、爆発音がまた響き、ホライゾンの前方に独男機が飛び出してきた。

彼の機体の左胸に備えられたミサイルの迎撃装置が、
ホライゾン機を狙うミサイルを捉える。
すると、砲口から放たれたレーザーがミサイルを撃ち落とした。

ホライゾンはそれを確認する間もなく、背後へ跳ぶ。

19 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:05:22.99 ID:4VijAKhF0
地面を両足で蹴り、宙へと浮かび上がったACは、
ブースタを吹かしてMTに背を向けたまま接近。

迷いの無い素早い動き。

予め計算していたとおりに動いたACにMTは対応できない。
あっと言う間に背中を取られたMTは、無残に切り捨てられてしまった。

橙の炎がHMDを通してホライゾンの目に灯る。

破風をものともしないACはブースタを稼働させ、東へと向かっていった。
独男はそれに先行する。5機もの数を相手に中距離戦を挑めば、被弾は免れない。

ましてや初期装備であるのならば尚更のことだ。

だから彼らは、ダメージを度外視した接近戦を望んだ。
ビルを遮蔽物として部隊を展開させるMTに、正面からACはぶつかっていく。

迷いの無い素早い動き。MTはレーザーとミサイルを怒涛という勢いをもって浴びせていくが、
二機のACは物ともせずに突貫していき、懐へと飛び込んでいく。

跳躍した独男機は空中から橙の刃を繰り出し、MTを斬り捨てた。

着地直前にブースタに火を吹かせ、着地の衝撃を緩和すると、
すぐに加速して傍にいたMTを切りつける。

20 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:08:10.90 ID:4VijAKhF0
そのまま旋回して真っ直ぐに進んでいけば、ビルから姿を覗かせたMTに突き当たった。

右腕を伸ばせば、ライフルの銃口がMTのコックピットに向けられる。

MTパイロットは目を見開き、咄嗟にトリガーに指を掛けるも、
それはあまりにも遅すぎた。

ライフルがコックピットに密着し、銃弾が放たれる。
一発、二発、三発と。

銃弾を受ける度に衝撃に身を震わせたMTは倒れていき、
コックピットからは炎が噴き出していった。

遅れて、回り込んでいたホライゾンが独男の左手側に現れる。

どうやら、独男が先程倒したMTは、彼が取り逃した物らしい。

( ^ω^) 『すまないお。敵機を二機撃破したお』



 
22 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:10:48.37 ID:4VijAKhF0

('A`) 『こっちは三機撃破。次だ』

ここまで、何も問題はない。APは90%を保っている。
大したダメージは受けていない。

残るは三機。

……それで終わりか。

そう思った独男は、さっさと終わらせてしまおうと機体を南東に向けるが、

『作戦領域に輸送機が接近。敵の増援だ』

(;'A`) 「……ちっ」

増援の報せに、思わず彼は舌打ちを吐き、
考えが甘かったかと自分の能天気さを悔やんだ。

『予定外ではあるが、これも撃破してくれ。
 全敵勢力の撃破を以って試験を完了とする』

('A`) 『了解』(^ω^ )

短く、そう応えた二人の試験生は、
その後、事の重大さを改めて知ることとなる。

23 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:13:28.43 ID:4VijAKhF0

******

試験開始から数時間前。

第3層にあるレイヴン養成施設のガレージに、
長めの髪をした地味な男が、パイロットスーツを着こんでACの前に立っていた。

灰色の初期塗装を施されている二つ目の頭部を持つそれは、
訓練生達が乗り、これから男が命を預けることになる機体だ。
ACとしては貧弱な武装と中途半端な性能しか持たない、はっきり言えば弱い機体。

しかし、癖らしいものが無いこれは、訓練ではとても重宝されている。

('A`) 「まっ、何度も乗ってるんだ。問題ないだろ」

憂いの籠る溜息を吐くと、男は機体を見つめてそう呟いた。

命を預けるには頼りないが、レイヴンとなる為の試験に用いられるという事は、
性能などではなくパイロットの実力で合格を掴んで見せろということなのだろう。

そう結論付けて不安を拭った彼は、もう一度機体の調子を確認するべく、
ACを固定するハンガーへと足を掛けていき、コアに乗り込んでいこうとするが、

( ^ω^) 「お……? 独男かおー?」

陽気な少年じみた声で名を呼ばれた独男は、
足を止めて声の主に振り返った。

24 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:15:04.33 ID:4VijAKhF0

('A`) 「……内藤? ……ホライゾンか?」

( ^ω^) 「おっおっお、やっぱり独男だったかお。久しぶりだおー」

男の答えに思わず微笑んだ独男は、喜びを隠さずに声を張り上げた。

( '∀`) 「おー、久しぶりだな! 二年ぶりか!?」

( ^ω^) 「だいたいそんなもんだお! 元気だったかお?」

( '∀`) 「あぁ、元気だったよ。そうでも無かったらここには来れなかったわ」

( ^ω^) 「おっおっお、それもそうだお。
        ハインさんの扱きは厳しそうだったから、心配してたお」

( '∀`) 「初日は泣きそうになったけどな。
     辛かったけど、おかげでここまで来れたよ。お前のほうは元気だったのか?」

( ^ω^) 「僕も元気でやってたお。でも、僕より後に入って来たワカンナイデスって小さい子が、
        僕たちよりも早くレイヴンになっちゃったのはへこんだおー」

へこんだと、そう語る割に彼は少年のような笑みを浮かべていた。
気楽な声音に、釣られて独男も笑う。

( '∀`) 「あー、もしかしてビロードってレイヴン名の奴かな。
     最年少でレイヴンになったって噂になってる奴」

( ^ω^) 「多分そうだお。まぁ、これからレイヴンになったら、
        アリーナなり実戦なりで追い抜いていってやるお」



 
26 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:17:23.40 ID:4VijAKhF0

('A`) 「レイヴンになれたら、な。出来たら俺は会いたくないな。
    初期機体で鉢合わせたりしたら、最悪だ」

(;^ω^) 「その時は白旗振って降参するしかないおね」

('A`) 「……どっちにしても、今回の試験に合格出来たらの話だけどな」

(;^ω^) 「だお……」

( ^ω^) 「でも、独男と僕なら大丈夫だお。
        独男はハインさんの弟子なんだから、頼りにしてるお」

(;'A`) 「うーん……頼られてもなぁ……。
     正直、まだ自信なくて、今回の試験見送ろうとしてたんだよ」

( ^ω^) 「そういうとこは変わってないのかお」

(;'A`) 「あぁ……自信だけはどうしても付かなくてさ。
     でも、ハインさんは早く受けとけって」

(;^ω^) 「とにかく、二人でがんばるお。昔の感覚、覚えてるかお?」

('A`) 「二、三年前だろ? あんだけシュミレーターで戦ったんだ。多分覚えてるさ」

(;^ω^) 「多分……かお。煮え切らないおねー」

ともかく、そう付け加えたホライゾンは、笑みを再び作って言う。

( ^ω^) 「独男と一緒で良かったお。これで安心して背中を預けられるお」


28 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:19:55.10 ID:4VijAKhF0
(;'A`) 「なんだよ、恥ずかしいな。俺じゃなくても何とかなるって。
     相手はMTだけなんだからさ」

( ^ω^) 「おっおっお、友達と一緒だからやりやすいんだお。
        じゃ、僕は僕の機体を確認してくるお」

('A`) 「あぁ、じゃあ後でな」

ホライゾンは大きな背中を独男に見せてACへと向かっていき、
独男は友人の少し変わった背中を見送りながらコックピットへ入っていく。
が、その前に、独男はホライゾンへと一言を付け加えた。

('A`) 「ホライゾン」

( ^ω^) 「……お?」

('A`) 「死ぬなよ」

簡潔な一言。

これから共に戦場に赴く友人を気遣った言葉に、
ホライゾンは微笑して親指を立てた。

( ^ω^)b 「了解だお」

そう応えた友人を一目見てから、独男はコックピットに着く。
ホライゾンはすぐさま踵を返して自機へと向かっていった。

29 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:22:40.55 ID:4VijAKhF0

それから数時間後に、試験は第一層第二都市区で行われることになる。

試験は、レイヴンズVIPが用意した依頼をこなすことで合否が問われる。
依頼、とは言ってもVIPが用意した無人MTを倒すだけであり、
実在の企業やテロリストを相手にするわけではないのだが、実戦は実戦だ。

命を落とす事もあり、過去に何人ものレイヴン志願者が死亡していった。

今回、独男とホライゾンがレイヴンとなるべく遂行する依頼は、
市街地を占拠した(とは言っても、実際には試験の為に土地を借りているだけなのだが)MT部隊の撃破。

MTはACと比べて、戦力的に遥かに劣る。

MTは所詮作業用に作られた機械で、ACは戦闘を目的に作られた機械だ。
だが、そのMTの中でも戦闘用に作られたものもある。
下手を打てばやられる可能性のある、油断のならない状況。

今二人が直面している物は、一人前のレイヴンとなんら変わりの無い物であった。

緊迫感を得ながらも彼らは数時間後、
レイヴンとなるべく第二都市区へと向かっていく。

30 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:24:42.00 ID:4VijAKhF0

******

『作戦領域に輸送機が接近。敵の増援だ。
 予定外ではあるがこれも撃破してくれ。
 全敵勢力の撃破を以って試験を完了とする』

試験官の人の渋い声がHMDから聞こえてくる。

( ^ω^) 『了解』

そう応えた僕は、レーダーの端に映った青い敵のマーカーを眺める。
青は敵が高高度にいる証で、たいていが航空機か何かだ。

試験官が言う通り輸送機なのだろうと判断した僕は、
輸送機の進路から降下ポイントを予測する。
北西から飛んできたそれはMTを降下した後に南東に逃れるつもりだろう。

……そうはいかない。

僕はACを北西へと向け、ブースタを点火する。
機体内のエネルギーが炎に転換されていき、機体を前方へと押し出していく。

それほど速くはないが、まだ間に合うはずだ。

黒い空には灰色の翼と身体が我が物顔で存在しており、
MTを数機詰める輸送機に相応しい巨体で風を切っている。

31 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:26:40.67 ID:4VijAKhF0
……僕の目的は一つだ。

相対距離は400mほど。ミサイルとライフルの射程距離内に入った。

右の操縦桿に備えられた照準軸を親指で操作し、上空へと照準を持ちあげていく。
すると、輸送機が照準の中に収まり、ミサイルが発射準備に入る。

……MT降下前に輸送機を落とす。

その間も僕は輸送機へと接近していき、ロックオンが完了すると同時にトリガーを引く。

が、

(;゚ω^) 「……ッ!?」

ミサイルは発射されなかった。
遅れて、耳障りな警告音が鼓膜を突き刺す。

HMDに映しだされる光景の左端に、エラーの文字が赤々と浮かび上がった。

(;^ω^) 『ECM!? ジャミングだお!!』

('A`) 『ホライゾン、前に出過ぎだ! 早く後退しろ!』

独男の声が聞こえ、驚きの虚脱から抜きだされた僕は、
慌てて機体を後方にさげていこうとするが、
それよりも早く敵MTは降下された。

ACよりも若干劣る体長を持ち、太い足と腕を持ち、
厚い装甲を持ったそのMTは、紛れもなくミラージュ社の高性能MT、MT09−OWLだ。



 
33 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:29:56.35 ID:4VijAKhF0

ECMを搭載し、ホバリング機能を持つこの人型MTには訓練で散々苦労させられた。

それが、1機、2機、3機と続々と降下されていき、
僕へと向かって突っ込んでくる。
OWLはライフルを構えて、ACにも劣らない火力を持つ銃弾を僕の機体に浴びせた。

装甲に銃弾が爆ぜて甲高い金属音が立ち、火花が散っていく。
その間にも弾丸は連射されて僕へと近づいてくる。

反撃しようにECMによって光学ロックは封じられてしまっているので、
ライフルはまだ扱えるがミサイルは使い物にならないと言っていい。

後退して、独男と合流するべき。

瞬時に操縦桿を切り、機体を反転させてその場を離脱しようとするが、
ブースタを吹かせて向かったその先には、もう一機のOWLが待ち構えていた。

(;^ω^) 「ちっ……」

ライフルが突きつけられ、弾丸がコアに突き刺さる。

損傷は軽微。しかし、背後からも銃弾は迫っており、
集中砲火を浴びる羽目になった僕のACは、ダメージを蓄積していった。

AP60%

34 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:34:11.03 ID:4VijAKhF0
HMDの端にそう表示される。

僕は前に立ちふさがるOWLへと真っ直ぐに突っ込んでいき、
ブレードを振るっていくも、ホバリングで宙に浮くこのMTはヒョイと後退することで避けてみせ、
再び僕にライフル弾を見舞ってきた。

ブレードが振るわれたことでエネルギーが消耗された所に、
弾雨を食らい続けてしまったことでACが熱暴走を起こしてしまい、
コンデンサ内のエネルギーは一気に零となってしまう。

(;゚ω゚) 「ちゃ、チャージングかお!?」

警告音が響き、緊急稼働に入ったジェネレーターが慌ただしく
空になったコンデンサ内に電気を満たしていくが、
そんなものをただ待っているだけではACはすぐに破壊されてしまう。

冗談じゃない。

僕はとにかくここから離れようと機体を操作していく。
フットペダルを重く踏み込めばACはジャンプする。

その時に生まれる慣性力を活かして前へと進み、
OWLを振り切ろうとするが、ホバリングによる機動から逃れらるはずもない。
ただ距離を、MTとの距離を取って被弾率を下げることのみを考えていた僕には、そうする他なかった。

だが、僕の努力は水の泡となって消えてしまう。

外部マイクが拾った、羽音が聞こえてきたのだ。

大きな身体を持つ、輸送機の羽音を。



 
36 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:38:02.60 ID:4VijAKhF0
ジェット音を響かせて第二都市区に進入してきたそれは、
ハッチを開いて更にOWLを降下したのだ。
新たに現れた3機のOWLが僕を囲み、銃撃を浴びせていく。

空中で身を振り、当てずっぽうにライフルを撃つも、
かわせず、当てられず、成す術もなく僕のACは抉られていく。

AP40%..30%...20%

どんどんと減っていくそれは、機体の状態を深刻な物にさせていった。
ジェネレーターはエネルギーを生成し、コンデンサ内を満たしていくが、
それよりも早く僕の機体は破壊されてしまうだろう。

……せめて一機だけでも。

その一念が僕に取りつき、目前にいたOWLへと僕は真っ直ぐに走り抜けていく。
フットペダルを軽く踏むだけでそれはなされ、
ロックオンをしない照準機でもだいたいの敵位置は捉えていた。

弾丸が発射され、OWLの装甲をあちこち抉っていくも、
反撃に向こうもライフルを発射していく。

弾丸が装甲を削り、ボロボロとなった腕部から火花が吹きだした。

恐らく、アクチュエーターか何かを損傷したのだろう。

腕の安定性能が落ち、銃の反動を上手く緩和しきれなくなってくるが、
構わず僕はOWLへと弾丸を連射していく。
続々と殺到していく鋼鉄の弾にOWLは貫かれ、甲高い音を響かせるが早いか爆散した。

39 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:42:37.86 ID:4VijAKhF0
道が開け、そこへと向かっていくが、周囲から浴びせられる弾丸が襲ってくる。

「AP10%―――危険です」

HMDから男性の機械音声が流れ、警告する。
死に物狂いで僕は包囲網を脱出しようと走り抜けるが、
左右から再びOWLが迫って来た。

チャージングは……後、3秒ほどで完了か。

3秒。残りAP10%で耐えきれるか耐えきれないか。

僕はACを大きく跳躍させ、空中で上体操作を行って弾丸をなんとか避けるも、
どうしても5機のMTからの集中砲火を浴びせられればかわしきれないものが出てくる。

どこからか飛んできた弾に被弾してしまい、着地するとOWLが懐に踏み込んできていた。

(;゚ω゚) 「―――っ!」

……読まれていた。

思わず息を詰め、死の覚悟を決めると、僕の目前でOWLは切り捨てられた。

その後ろには灰色のACの姿があり、二つの目が赤色に輝いていた。

(;゚ω^) 「は……ッ!」

呆気に取られてしまうが、咄嗟にブースタを吹かせて背後へと引いていく。
チャージングは、既に完了していた。

40 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:43:44.80 ID:4VijAKhF0
目前でMTが大きな爆発を生み、突如として現れた増援に、
残るMTパイロットは彼へと注視する。

('A`) 『ホライゾン、急いで後退しろ。残存勢力はこいつらだけだ』

傍に立っていたOWLが独男機にライフルの銃口を突きつけるも、
彼は右手に構えたライフルで、正確にOWLのカメラアイを撃ち抜いた。

大気を震わせる破砕音が響きわたり、OWLが後ろから倒れていく。

独男は右へと機体を加速させ、僕は彼の背後を抜ける。
包囲網を作りだしていたOWLの一機に接近し、
独男機はライフルを乱射する。

狙いの定まっていない、デタラメな撃ち方だ。
独男のACもECMの影響を受けてしまっているのだろう。

それでも牽制にはなったのか、動きを鈍くしたOWLの懐に易々と踏みこむと、
左腕を大きく一閃して切り払ってみせた。

胴から真っ二つにされたOWLは大きな炎を抱き、飲まれていってしまう。

あっと言う間に数を半分に減らした独男は、ここで動きを止めた。
隊形を組み直し、扇形になったMT部隊と相対して銃を構える。


43 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:46:37.25 ID:4VijAKhF0

('A`) 『数を減らす。ホライゾン、ECMの影響が弱まったらサポートを頼む』

(;^ω^) 『了解だお』

三機のOWLが、動きを見せる。

それは鎖で繋がれているかのように連なった動きだ。
三機全てがそれぞれ動き出していき、独男のACをほぼ同時に取り囲む。

対し、独男機はそれを許さない。

ブースタから炎が噴射されてACが前方を行く。
エネルギー消費を無視した、速度重視の軌道だ。
僕はそれを見届けながら後方に屹立するビルの陰に隠れていった。

AC規格のライフルから放たれた、人間の使う物と比べ物にならない銃声が街に一つ、響きわたった。

44 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:49:10.41 ID:4VijAKhF0

******

MTパイロット達は一機のACを取り囲む。

灰色の、AC開発初期に作られたパーツで組まれた機体だ。
もともとダメージを受けていたというのもあり、ACには所々破損が見られていた。

OWLに乗る三人のパイロット達は、後にやってきたもう三機のOWLと合流したというのもあり、
ACを撃破出来ると確信出来た。ましてや、大金を叩いて買ったミラージュ製の高級MTだ。
勝てなくては意味がない。

六機のOWLがACを取り囲む。

それよりも僅かに早く、MTパイロット達はトリガーを一斉に引き絞り、
ACへと一斉攻撃を開始する。

堅牢なACの装甲が続々と抉られていき、火花を散らせ、破損していく。

なんとか逃れようとするも、MTパイロット達が巧みにOWLを操ることで、
ACは包囲を突破できなかった。

熱暴走を引き起こしてしまったその機体はチャージングに陥り、ブースタを使えなくなる。

敵に囲まれた中で機動力が大きく削がれた、絶体絶命の窮地。

しかし、決死の覚悟を決めたのか、ACは自分の突き当たりにいるOWLへと銃を放った。
ECMの干渉により光学照準器を使えない中で行われるそれは、
狙いが出鱈目な一心不乱の乱射だ。

45 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:52:17.16 ID:4VijAKhF0
MTが一機、その弾丸の嵐に見舞われて倒れていく。

ACはそれを好機としたか一気にそこを突きぬけていこうとする。
跳躍し、移動距離を稼いだそれの動きを、MTパイロットは読んでいた。

宙へと浮かび上がった機体が落下していき、その衝撃を和らげるために身を折っていく。

そこへ、すかさずOWLが踏みこんできた。
ライフルを構え、正確にコックピットへと狙いを定めたパイロットは、
トリガーを引く間もなくこの世を去った。

OWLは身を真っ二つに超高熱を持つ光に切り裂かれ、爆散した。
赤の火球が破片を吹き飛ばすと、その後にはもう一機の灰色のACが姿を現す。

その刹那、傍に立つOWLが慌てて銃を突きつけるも、遅い。
銃を振るったその時にはOWLの頭部を撃ち抜く。カメラアイの破砕音が、大きく鳴った。

残る四機のOWLはこの機体に対処する為に、動きを作っていく。
そして、瞬く間にもう一機撃破されてしまう。
咄嗟に隊形を組み直し、MTパイロット達は身を強張らせた。

……何かが違う。

彼らは、それを肌で感じ取っていた。
この機体は先程の機体と全く同じであるが、纏う雰囲気は全然別の物である、と。

三機のOWLが、その機体を取り囲む。
水が流れていくかのような緩やかな動きで、隙を見せず彼らはACを取り囲む。
対し、それは前へと突っ切っていき、大きな損害を被ったACは後退していく。

46 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:55:18.61 ID:4VijAKhF0
その動きを見たMTパイロットはそれを追うが、もう一機のACがそれを許さなかった。

追撃の動きを作った、その直後。ACは銃弾を一発放った。
空を裂いて進む弾丸は、OWLのブースタへと飲みこまれていくかのように突き立っていった。

ブースタは大爆発を起こし、背部装甲を飛び散らせていく機体は、
浮かび上がらせていた身を地に落として硬質な金属音を響かせた。

アスファルトに火花が散っていき、数mほどの距離をOWLは滑っていく。

深手を負ったACはビルの陰へ隠れ、銃口から白煙を燻らせる銃を斜めに
構えたACは、残る二機のOWLと対峙する。

戦慄が彼らへ走っていく。

光学ロックが使えない状態から、ブースタを正確に狙い撃った
ACパイロットの技量に、彼らは我が目を疑った。

一人のMTパイロットが、もう一人へと告げる。

『敵増援を撃破する。機体間の距離を等距離に保て、敵機を撹乱する。相手も無傷では無い』

47 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:57:08.84 ID:4VijAKhF0
******

一機撃破。

ホライゾンを追撃しようとしたMTを撃ち抜き、残弾を確認。
逆関節型MTに大量の弾を使ってしまったが、まだまだ余裕はあるようだ。

砂嵐しか映らないレーダーが少しずつ回復し、嵐に紛れて一瞬だけ敵のマーカーが現れる。

目の前に見える敵と、背後に立つ敵。この二つが残存敵だ。
こいつらさえ倒せば俺達は晴れてレイヴンとして登録され、"自由"を得る。

自由になれる。多くの一般市民と違い、
俺達は企業の言いなりになる必要はなくなるのだ。
その為にも、俺はこのMT部隊を排除する必要がある。

操縦桿を握る手に微かに力が籠り、親指で照準軸を操作するが、
オレンジ色の四角形の枠が敵機を捉えるもロックをしてはくれない。

先程放った弾は相手の動きが読めていたから当てられたが、
二機との機動戦の最中にはそんなまぐれは通用しない。
さて、どうしたものか……。

目前のOWLと睨み合い、思考していくと、脳裏に師匠の顔が過ぎった。

(;'A`) (ハインさん、アンタならどうする……?)

不利は承知でも距離を離しての銃撃戦を挑むか、
相手の軌道を読んで距離を詰めてブレードで切りかかるか。
効率が良いのは後者だろう。

48 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 22:59:11.96 ID:4VijAKhF0
だが、もし俺が一機に接近した時、もう一機がホライゾンのほうへと向かったら?
後もう一撃でも受ければ、アイツの機体は爆発しかねないような状態だった。

恐らく、ブースタを点火させるのにも危険が伴うだろう。

数多くの戦法が次々に頭の奥から浮かんでくるが、
それを実行してホライゾンを守り切り、こいつらを撃破できる自信が無い。

自分の心臓の鼓動がやけに大きく聞こえ、じわりと脂汗が滲んでくる。
トリガーに掛けた人差し指が小刻みに震えだし……

(;゚A`) 「――――ッ!」

目前のOWLが動きを作りだした。

前方へと一気に高速に乗りだしたOWLは、ACの脇を抜けていく。
反射的に振り返ろうとすると、コックピットシートから震えが来た。
コックピットに脳を揺さぶる硬質な金属音が轟いていく。

(;'A`) 「……被弾したか」

気付けば、正面にはもう一機のOWLがこちらに照準していた。

もう一撃が放たれていき、弾丸は足元を通り過ぎていく。
瞬時に両のペダルを思いきり踏みつけ、機体を跳躍させていた俺はOWLの姿を捉える。

……こいつら、すれ違いざまに撃ってきたのか。

照準軸を操作してOWLに銃を向けるが、その頃には既にOWLは移動していた。
急加速し、上空に昇って来たその機体は俺の前後に取りついてくる。

49 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 23:00:32.03 ID:4VijAKhF0
それよりも速く、弾丸は飛んできた。

上体の重量を上手く利用して身を振って避けるが、
これで照準がブレてしまい、発砲の機会を失ってしまう。

機体は落下を始めていき、OWLは追撃してくる。

そうか。お前らがそのつもりだって言うんなら話は早い。
そのまま俺は垂直に地面へと落下していき、真上から迫ってくるOWLに照準。
しかしそいつは機体を背中から落として宙を切り、俺の照準から逃れていった。

……そうだろう、そのつもりなんだろう。

俺には、こいつらの考えが手に取るように分かった。
先程までとは打って変わって、頭の中に一本のレールが通ったかのようだ。

何をするべきか。

先手は既に打ってある、後は結果を出すのみだ。
ブースタをほんの一瞬だけ吹かし、操縦桿を後方に倒していく。
すると機体は後方へと重量を預けていき、ブースタの推力と相まって浮かび上がっていった。

次の一瞬には、足元をOWLが通過していく。

……狙い通りだ。

すぐさま操縦桿を前へ倒していくと、機体は前のめりになり、
ブースタをもう一度噴かせるとそいつの上空へと移動。
ブースタが切られ、ただ落下していくだけとなったACは一気にOWLへと高度を等しくしていく。

50 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 23:02:26.75 ID:4VijAKhF0
ACとOWLでは、機体の重量が違う。

機動力ではこちらが劣るが、落下速度ではこちらの方が上だ。
OWLのパイロットが俺の動きに気付いたのか、振り返ろうとする。

だが、もう遅い。

ACの左腕に装備されたブレードが唸る。
橙色の光が剣と化していき、OWLは真一文字に切り裂かれた。

破片をばら撒いてそれは落下していったが、まだ破壊には至らない。
しかし、ブースタは破壊されたのだろう。姿勢を制御する術を失ったOWLは
鈍い動きで身を振り、何とか着地していく。

遅い。

照準が使い物にならなかろうが、これほど鈍い動きをしていれば弾を当てことは難しくはなかった。
ライフルが火を噴き、弾雨がOWLの頭部に降り注いで破砕されていった。
穿たれ砕かれ、機体が火花を散らし炎に飲まれていく。

バラバラになった機体の上に俺のACが着地し、破片を踏み散らす。
様々な金属の音が入り混じり、後に重い音が響いた。

目前には、着地した最後の一機であるOWLが、
ビルを背景として立ちはだかっている。

51 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 23:05:43.08 ID:4VijAKhF0
その機体はブースタを吹かし、着地時の隙を狙ってこちらへと急接近。

即座にライフルを向けてトリガーを引き倒すと、OWLのカメラアイは打ち砕かれ、
HMDの画面が真っ白に焼きついていくと、
一拍の間が空くと何か違和感を覚える光景が映し出された。

(;'A`) 「……ちっ」

頭部のカメラアイを片方やられたことに舌打ちを零し、
同じくカメラアイを失ったOWLを探した。

HMDを見れば、既にECMの影響が弱まったようで、レーダーは回復していた。

それには、敵のマーカーが青く現われていた。

……上ッ!
即座に判断を下し、瞬く間に頭上へと銃を向けるが、
OWLはこちらへと銃を突きつけており、トリガーが引き絞られていくと銃声が立っていき……。
胸部から爆発音と火球を生んだそれは、背中を地面へと向けて落ちていった。

銃弾は頭部付近で着弾したようで、散った火花がHMDの端から飛び出してきた。


 
53 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 23:10:51.29 ID:4VijAKhF0
大の字に転がったそれはもはや、MTなどではなくただのガラクタでしかなかった。
視線を上げれば、ビルの陰から飛び出してきたのであろうホライゾンの機体が目に映った。

左肩に装備されているミサイル射出機からは白煙が立ち上っている。

『敵戦力の殲滅を確認』

スピーカーから教官の声が響く。太く、静かな力を感じる声。
爆発音と被弾の音以外の音が、酷く新鮮に聞こえた。

試験開始からどれほどの時間が経ったのかも分からない。
一体どれほどの敵を撃破したのかも覚えていない。

初めての戦場。

生と死が傍にある場所で戦い、俺達は生き残ることが出来た。

そして―――――

『レイヴンズVIPへようこそ、新たなるレイヴン』

今この瞬間から、俺達はレイヴンとなった。

54 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 23:13:59.20 ID:4VijAKhF0

     ―――――"レイヴン"―――――

     最強の人型機動兵器、アーマードコアを操り、
     莫大な報酬と引き換えに依頼をこなす傭兵。
     支配と言う名の権力が横行する世界で唯一、
     何者にも属さない例外的な存在である。



 
56 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 23:18:09.71 ID:4VijAKhF0
******

試験が終了するとすっかりと静かになった夜の街に、輸送機が飛来した。

数分程前にACを投下した機体だ。
輸送機はACを回収すると再び飛び立っていき、夜空を舞う。

パイロットである独男は機体が浮き上がっていく浮遊感を感じ、
それは足が着いているのに身体だけが引っ張り上げられているようで、
彼にとって気持ちの良いものではなかった。

('A`) 「ふぅ……」

HMDの取りつけられたヘルメットを外していき、
軽くなった頭を独男は撫で上げ、疲労した目を擦っていった。

目頭を押さえ、手前にあるコンソールパネルを操作して損害状況を確認。

AP40% ジェネレーターやラジエーターは無事だが、
フレームはだいぶ削られてしまったようだ。

独男は溜息を吐くが、弾薬費と修理費は全てVIPから支給されることを思い出して、
憂鬱な気分が少しは紛れていくのを感じた。

シートに全身の力を預けていくと、回線が開かれる。

『独男、流石はハインリッヒの弟子だ。彼女によろしく頼む』

('A`) 『あぁ、了解』

57 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 23:20:07.68 ID:4VijAKhF0

『ホライゾン、お前は少し賢くなれ。隙を見せれば殺られるぞ』

(;^ω^) 『申し訳ありませんお』

『しかし、二人とも良く生き残った。
 レイヴンとなったお前達に伝えておかねばならないことがある』

『我々レイヴンは独立した自由な存在だ。
 どこの組織にも属せず、我々はその力のみを代替する。
 だが、絶対に"レイヤード"の秩序を乱すようなことはするな』

『"管理者"に目を掛けられるようなことは絶対にするな』

"管理者"

その単語が話題に上ると、二人はその身を固くさせた。
重くなった口を開き、短い応答の言葉を二人は紡ぎだす。

('A`) 『了解』(^ω^ )

それは、その存在がレイヤードに生きる人間にとって、
絶対性を持った存在であることを証明させる言葉であった。



 
59 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 23:21:22.57 ID:4VijAKhF0

******

とあるACガレージの一室で、灰色のミドルヘアーをした女性がPCに向かっていた。

画面にはメールソフトとインターネットブラウザが起動されており、
レイヴンズVIPのHPの新規レイヴンの登録告知が映し出されていた。

レイヴンの登録名と機体名に目を走らせた彼女は、口端を緩めた。

「彼は受かっていたかい?」

男の声がする。

鈍いが、どこかハスキーな声だ。

「あぁ、当然だ。私の育てたレイヴンだぞ?」

自信の籠った女性の冷ややかな声が返る。次いで、

「これからアンタにも、前みたいに働いてもらうことになる。頼めるか?」

「あぁ、勿論さ。―――夢の続き、俺も見させてもらうことにするよ」

「そうか……また、見られるのか。夢が」

「………」

男はその言葉を聞いて黙りこくってしまう。
が、女は構わずに言葉を連ねていく。

60 : ◆K8iifs2jk6 :2010/04/24(土) 23:22:14.26 ID:4VijAKhF0

「夢破れたり。次は、そんな結末にはさせんさ」

「もっとも、それすらも夢なのだがな……」

どこか落胆の色が見え始めた彼女の声に、男は声を重ねていく。

「それで、機体とレイヴンの登録名はどうなった?
 まさか、機体にいい加減な名前をつけたりはしていないよな?」

「そんなことはしないさ。きちんとした名前を付けてやった。
 私達の夢に相応しい、そしてアイツの夢を叶える機体に相応しい名が。
 昔から、これにしようと決めていた」

「ほう、どれどれ――――」

女がPCを指さし、男が画面を覗いていく。
そこには Raven name:ドクオ AC name:ナインブレイカー と記されていた。

『求めるものは、"最強"と言う名の称号だ―――』

自信に満ちた表情で語った彼女は笑みを浮かべている。

それは夢に破れた一人の女性と、一人のレイヴンを目指す少年が唯一交わした約束事であった。

鋼鉄の監獄とも呼べる、冷たき世界で結ばれた壮大な野望を胸に、
一羽の渡り鴉は幼き翼を羽ばたかせ始めていく。


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