同じ空の下にいるようです


122同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 15:54:35 ID:3O1ucA/E0
 かりん こりん
 茶けた銅の音 りんと みみ しみて

 きろん ころろん
 一人 あたしを なぐさめる
Λ Λ
(#゚;;-゚) お空はきょうもあおいのかしら

( ・∀・) とても澄んだ空気に、大きな入道雲がもうもうと立ち上がっているよ

 ちらり 格子を 覗きやる
 むかし 出会った ひとをみる

 ひとは ふたつの ゆびを立て
 にぃと しろい歯 のぞかせた

( ・∀・) 「ねこびと」さん、こんにちは
Λ Λ
(#゚;;-゚) 「風興し」さん、こんにちは

123同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 15:55:23 ID:3O1ucA/E0
Λ Λ
(#゚;;-゚) 世界は変わりないのかしら

( ・∀・) 君の立っていた頃の世界より、少し、騒がしいかもしれない
Λ Λ
(#゚;;-゚) 夏はかえるさんも、せみさんも、盛んに鳴くものね

 ふふ と彼は ほほえんで
 しかして 多くは 語らざる

( ・∀・) そうだね、みんな、必死で幸せを掴もうとしているよ
Λ Λ
(#゚;;-゚) そう それは本当に、本当に、嬉しいことだわ

 ひとつふたつと ゆびを立て
 あたしも すこし まねをした

 あはは ふふふ と笑いあい
 かりん こりん と風が鳴く

( ・∀・) 君もそろそろ自分の幸せを探さない?
Λ Λ
(#゚;;-゚) あたしは、ここを出られないわ 何度誘ってくれても、同じよ

124同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 15:56:23 ID:3O1ucA/E0
 ながい月日を 生けれども
 あたしを救う ものはなし

 食した血肉が 生かせども
 胸に巣食った 虚無の華

( ・∀・) ただの猫だった頃から本当に強情だよね
Λ Λ
(#゚;;-゚) 褒め言葉としてうけとっておくわ

( ・∀・) お母さんだって、こんな所で生かすために魂を託したわけじゃないと思うよ?
Λ Λ
(#゚;;-゚) ・・・

 かりん こりん 風が鳴く
 きりん こりりん 静かなる

 かりん こりん 座敷牢
 きろん ころろん あたしは ひとり



125同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 15:57:13 ID:3O1ucA/E0
( ・∀・) じゃーさ、来年の夏もまた来るから、考えといてよ
Λ Λ
(#゚;;-゚) ええ またね おせっかいな「風興し」さん

( ・∀・) またね へそまがりの「ねこびと」さん

 にぃ と この世に 生を受け
 木々に花々 香りを知って

 春夏秋冬 一回り
 雪の白さに 驚いた

 しかし 寒さと飢えの中
 母は 我が身を投げ出した

 にぃ と あたしは歯を立てた
 愛する母を 食べ 生きた

 それもいまでは むかしなり
 ねこびとにさえ 旧いこと・・・

 かりん こりん  すずやかに

 きろん ころろん そらの おと・・・

***

126同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 15:57:55 ID:3O1ucA/E0
 暑い、暑いよ、死ぬほど暑い。
 どうしてこんなに暑くなれるのか、地球は修造か。
 暑くなることで地球はウィンブルトンで勝てるのか。

('A`)「ホゲァ」

 両親の帰省に巻き込まれ、俺は山に囲まれた田舎へ連行された。
 はぁ〜 ゲームもねぇ! クーラーねぇ!
 なにより友達、もとからいねぇ!

('A`)「オラこんな村さ嫌だぁ〜」

 地元にいればなんとか、数少ない友達と部屋でゲームとか選択肢があった。
 しかしである、半分ひきこもりで日光に弱く親戚連中と親しくない俺だ。
 こんな状況下でできるのは風通しのいい部屋で寝るだけだ。

('A`)「だが、頼みの綱である風もほとんど、なし。これは死ぬる」

( ФωФ)でぁーる

('A`)「熱いよロマ、くっつくなよ」

 この猫は黒なんだから熱を蓄えていることを自覚しろ。
 そしてひっつくな。
 あと、セミども、うっせーから一時間静かにしてろ。

127同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 15:58:39 ID:3O1ucA/E0
('A`)「川でも行こうかな・・・」

 とは、言ったものの、イトコ達の誘いを断った手前、行きづらい。
 考えてみれば幼女もいるかもしれないんだよな・・・

('∀`)「次はカメラ持ってこなきゃいけねーなフヒヒwwww」

( ФωФ)でぁーる?

 不思議そうな顔で俺を見る黒猫野郎。
 頭を撫でてみたらやはり熱いくらいだった。
 寄るな暑い。

 チャイム。

「こんちゃー! ・・・あれ、車もないし誰もいないのかな」

 うっわ、めんどくせ。
 留守番はこれだから嫌なんだよ。
 居留守使ってやろう。

( ・∀・)「あ、なんだいるんだ。君、家の人? 見ない顔だけど」

 そうだ、ここ田舎じゃん。
 普通に人間入ってくるんだ。

128同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 15:59:20 ID:3O1ucA/E0
('A`)「・・・はあ。親戚のもんです」

 やけに爽やかなスーツ姿のおっさんだった。
 というか、お兄さんくらいの年齢か。

( ・∀・)「あー、じゃあさ、せっかくだからお中元渡しちゃっていい?」

 なんだ配達かよ、先に言えって。

('A`)「はんこの場所知らないんでサインでいいですか?」

( ・∀・)「サイン? いらないよ。ここの家族とは付き合い長いからね、普通に贈りもんさ」

('A`)「へえ」

 で、そのお中元とやらはどこにあんのか。
 見たトコ手ぶらで、親交のある人を訪ねるにはおかしい格好だ。

( ・∀・)「ちょっと待ってね、うーん、と。あれがいいな」

 スーツ男は少し悩んで、両手を叩いた。

129同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:00:03 ID:3O1ucA/E0
 で、広げた瞬間、その手には大きな箱がそれぞれ一つずつ。

(;'A`)「え!? どっから!?」

 軽々とスーツ男は俺のいる軒先まで箱を運ぶが、俺は身動きが取れない。
 錬成陣無しかよ!?

( ・∀・)「何言ってるかわかんないけど、はい。ここのオヤジさんハムとか好きだったよね。あと、こっちはビール」

(;'A`)「いやいやいや!」

 しかも二つともギフトセットというには少々デカイぞ!?
 これいくらだよ・・・

( ・∀・)「両方とも涼しい場所に置いといてね」

 と言いつつ、スーツ男は背を向けて歩きだす。

(;'A`)「えええええ」

( ・∀・)「そうそう、『風』の人が来たって行ってくれたら分かるから」

 俺置いてけぼりすぎるだろ!

130同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:00:49 ID:3O1ucA/E0
( ФωФ)でぁーる

( ・∀・)「お、ロマネスクじゃん。元気?」

( ФωФ)でぁーる

 ちら、と一人と一匹が俺を見る。

( ・∀・)「ふーん。お前も大変だな」

('A`)「?」

( ФωФ)=3

 やれやれ、といった感じの奴ら。

('A`)「え、なにこれ? なんで俺馬鹿にされてる風なの?」

( ・∀・)「いやー、なんでも。留守番ご苦労さん」

 ついに去ろうとしたスーツの背に、ロマが声をかける。
 こいつら昔恋人同士か何かだったのかよ。

( ・∀・)「・・・そうな、ロマネスクがそういうなら。もうひとつ追加で置いてくよ」

131同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:02:00 ID:3O1ucA/E0
 もうひとつパン、と合掌。
 そして、現れたのは。

( ・∀・)「ちゃらーん、よく冷えたスイカなりー」

(;'A`)「もう何がなんだか」

( ・∀・)「あ、そうそう、ロマネスク。俺からもお願いがあんだけど」

( ФωФ)でぁーる?

( ・∀・)「あとで、でぃちゃんとこ遊びに行ってやってくれる?」

( ФωФ)でぁーる

 一人と一匹は俺をよそに、挨拶を交わした。
 目の前で村八分状態にされると堪えるよね。

(;'A`)「あんた一体何者だよ」

「『風』の人だってば」

 聞こえるが早いか、停滞していた空気が一気に流れた。
 突風だ。
 目も開けられないような、凄い風。

132同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:02:41 ID:3O1ucA/E0
 次にようやく目が開けられたとき、スーツの男は消えていた。
 なんだアイツこわっ、田舎こわっ。

( ФωФ)でぁーる

 黒猫が縁の下に転がりこんでいた大玉のスイカを突いて鳴く。

('A`)「お中元、ねえ」

 俺はよく冷えてるのを確認して、すぐさま台所で半分に切った。
 もうわけ分からんし暑いから半玉食ってやる。

('A`)「誰も彼も、俺には理解できんよ、全く」

 中学生にして世間に見切りをつけている、もといつけられている俺の台詞は、風に飲まれた。

('A`)「あれ・・・」

 そういえば、さっきまで風なんて・・・。
 ちりん、ちりん、と風鈴が鳴った。

('A`)「お中元、ねえ」

 もうひとつ呟いて、俺はからっ晴れの空の下、スイカにかぶりついた。
 ・・・甘い。



***

133同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:04:10 ID:3O1ucA/E0
 祭り囃子に草木の香り 木陰ざわざわこそこそりん
Λ Λ
(*;ー;) ううう

 月夜 星空 虫の声 浴衣姿のべその声
Λ Λ
(*;ー;) ギコくんとはぐれちゃった・・・変化も解けちゃったし

 けれどその耳 人ならざりて それを隠してうずくまる

 てろん 垂れたる猫の耳 ねこびと達のとがり耳
Λ Λ
(*;ー;) せっかくお姉ちゃんにおまじないかけてもらったのに・・・

 がさり! がさがさ! 何かの気配!
Λ Λ
(*;ー;) にゃっ

 小さなねこびと ぴゃっと跳んで鳴いた!

 闇の中から何が出る?

134同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:05:19 ID:3O1ucA/E0
( ФωФ) やっぱりこうなってたのである

( ・∀・) あっ、なんだホントにお祭りに来てたんだ

 真っ黒オス猫 一匹かさり 真っ黒洋服 一人ががさり
Λ Λ
(*;ー;) ロマくん! 風興しさん!

 ねこびと少女は ほっとしてわらう

 洋服男もそれみて わらう

( ・∀・) デレさんにきいて来たんだけど、どうして変化とけちゃったの?
Λ Λ
(*;ー;) あんね、あの、「らむね」っていうのが辛くてね・・・ギコくんにもらったからね・・・

( ・∀・) ぷっ・・・あははは・・・そっかそっか びっくりしちゃったんだね

(;ФωФ) 笑いごとではないのである 我輩もあのシュワシュワした輩は好かん

 黒猫神妙 男は笑顔 ねこびとは困り 赤い顔



135同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:06:00 ID:3O1ucA/E0
Λ Λ
(*;ー;) どうしよう ギコくん あたしのこと怒ってるかなあ かってにいなくなったから

(;ФωФ) ぬあーん ねこびとも大変であるな

( ・∀・) ・・・よーし、じゃあ、こうしようか

 男は両手 ぱんと合わせ ひらく

 空気をこねて 混ぜては 返し

 ゆるり 流れた 木陰の大気

 やがて まあるく 集まる空気

 大円 小円 地面にえがき

 できた これこそ ・・・なんだろう?

( ・∀・) デレさーん、デレさーん? お休みのところごめんなさーい

 少ししてから 綺麗なお声

 ねこびと 小さく驚いた

136同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:06:59 ID:3O1ucA/E0
「ちょっと、なにー? 人間の言葉で喋ってよー」

( ・∀・)「あっと失礼。あのー、しぃちゃんのおまじないなんですけど、かけなおして貰えませんか?」

「うそ、解けちゃったの?」

 もじもじ ねこびと くちびる ふるる

( ・∀・)「まあまあ、色々あるでしょうよ。女の子なんだから」

( ФωФ) であるな
Λ Λ
(*;ー;) ううう

「仕方ない。しぃ、そこにいるのね。訪問陣の中に立ってちょうだい」

 しょげた 少女は 円陣に立ち

 顔を赤らめ 浴衣を握る

「遠距離からだから三時間しかもたないけど、大丈夫よね」

( ・∀・)「あざーす」

137同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:07:45 ID:3O1ucA/E0
 ちょっぴりあとの 祭りの中に

 浴衣姿の 少女が一人

(*゚ー゚)「ギコくん! ギコくんどこ!?」

 どしん 可憐な少女が 転ぶ

('A`)「おっと、大丈夫?」

 しかし するりと立ちたる動き

 しなやか 柔らか 猫のよう

(*゚ー゚)「お兄ちゃんごめんなさい! ギコくーん!」

「おーい、しぃー! どこだゴルァ!!」

('A`)「なんだ、あんな小さい子にも彼氏いるのかウツダシノウ」

( ФωФ)でぁーる

 黒猫に気付く 鬱屈少年

 抱き上げ やれやれ 帰途に着く

138同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:08:29 ID:3O1ucA/E0
(*゚ー゚)「ごめんね、はぐれちゃって!」

(,,゚Д゚)「俺こそゴメンだぞ、ゴルァ」

( ・∀・)「へい、そこな可愛いカップル。これやるよ」

 二人の行く手に 粉モノ屋台

(*゚ー゚)「あっ」

 男が渡した ほかほか包み

 かつぶしたっぷり たこ焼き包み

(,,゚Д゚)「お・・・? ありがと、だゴルァ?」

 礼を言う間に 男は消えて

 少年少女は 辺りを見やる

 けれどどこにも 影すらなくて

 どかん その時 花火が上がる

139同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:09:10 ID:3O1ucA/E0
 夜空に咲いた 大輪が

 照らす 小さな男女があって

 どちらからとも 知らないが

 二人の手は きゅっと 握られた

 隣の人と いれますように

 ながーくながーく いれますように

 少女は 笑って見上げてる

 夜空 星空 夏の空

 どかん ばらばら

 花火の空を

***

140同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:09:52 ID:3O1ucA/E0
 潮の華は好き。
 本物よりも形が多彩で、儚いから。

 同じ理由で人も好き。
 色んな人がいて、やっぱり、儚いから。

ζ(^ー^*ζ「んー、いい天気。ほら、窓から顔出していいから」

 山を越えるには車がいるけど、海まで20分もかからない。
 だから田舎だけどこの村が好き。

ζ(゚ー゚*ζ「どうした少年元気がないぞ」

('A`)「酔った。デレ姉さん、気持ち悪い」

 親戚のドクオも、まあまあ好き。
 私の胸元とかを素直に凝視するから、青少年って感じがいい。

ζ(゚、゚*ζ「もうちょっと我慢してよ、すぐ着くから」

('A`)「寝たい・・・暑い・・・」

141同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:10:34 ID:3O1ucA/E0
ζ(゚ー゚*ζ「着いたー!」

('A`)「おお、海なんか久しぶりかも」

 私は早速車を降りて、サンダルも脱いでしまった。
 麦わら帽子にワンピース。

 うーん、なんという夏スタイル。
 こりゃ都会ではプレミア付くね。

('A`)「ここはいつまでも綺麗だね」

ζ(゚ー゚*ζ「でしょ? 変わらない良さがここにはあるんさ」

('A`)「・・・クーラーがあれば俺ももうちょっと好きだよ」

ζ(゚、゚*ζ「風情ないなーアンタは」

 都会っこはこれだから。
 色んなモノを「視る」力だってそんな環境じゃなくなるってーもんよ。

142同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:11:33 ID:3O1ucA/E0
 軟弱モノを捨て置いて波間に歩けば、白い猫が足元に擦り寄ってきた。
Λ Λ
( ^ω^) にゃおっお

ζ(゚ー゚*ζ「おっ、いたな猫丸」

 ここから歩いたところにある漁港を巣にするオス猫だ。

('A`)「なんだコイツまだ生きてたのか」

ζ(゚ー゚*ζ「こらこら、アンタよりも人生の先輩よ」

('A`)「へえ?」
Λ  Λ
( ^ω^) きめえ

(;'A`)「!?」

 私はきっと白猫を見咎め、口を閉じさせた。
 好奇心猫を殺し、口は災いを呼ぶのだ。

(;'A`)「えっ、いま、あれっ!?」

143同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:12:17 ID:3O1ucA/E0
ζ(゚ー゚*ζ「何?」

(;'A`)「気のせい・・・?」
Λ Λ
( ^ω^) にゃおっお

 知らずともよい世界というものがある。
 私は適当にはぐらかして、海に足を浸した。

 白猫も着いてくる。
 ドクオは、持参のタオルを頭にかけて砂浜に座り込んでいた。

( ・∀・)「うおおおおおお」

 遠方をどこかの馬鹿がバタフライで泳いでいる。
 今年の夏は仕事をあらかた片付けてしまったらしい。

('A`)「あの人どーっかで見たことあるような」

ζ(゚ー゚*ζ「あんなんと知り合いなの?」

( ・∀・)「ふはははははは! トビウオ・スイム!」

('A`)「気のせいだね」

144同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:13:36 ID:3O1ucA/E0
 ずん、ざざんと浜に響く波音。
 肌がひりつく陽光。

 私は夏が好きだ。
 色々なエネルギーに満ちて、終わる頃には静かな切なさがあるから。

ζ(゚ー゚*ζ

 何回も転生を繰り返す、私のような魔女には儚さが羨ましい。
 次にまた私が死ぬのは8年後くらいだ。

 そして、18歳の肉体で蘇る。
 村の人間は誰もが疑問を抱かず、それを受け入れる。

 昔の写真に、私はいつも同じ姿に写っている。
 でも、誰もそれを不思議に思わない。

ζ( ー *ζ

 村の中でも、猫人は影の存在であり、特異だ。
 特に、私は一番の異物、異形。

145同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:14:20 ID:3O1ucA/E0
 何かの終わりがけを眺め、見送る。
 どうしてそんな使命を負ったのか、今は思い出せない。

 何度目の転生かも、私には思い出せない。
 そして、原初の私自身のことさえも。

('A`)「デレ姉さん」

ζ(゚、゚*ζ「おっ、なんだい」

('A`)「昔も同じような光景を見た気がする。デジャヴュかな」


ζ(゚ー゚*ζ


ζ(^ー^*ζ「よくある、ことだよ」
Λ Λ
( ^ω^) にゃお

ζ(゚ー゚*ζ「猫丸もそう思うよね」

146同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:15:10 ID:3O1ucA/E0
('A`)「あー、確かに。村に帰ってくるとよくあるわ。ごめん、なんでもない」

 ドクオ、それは、きっとそうなんだよ。
 私にも覚えがある。

 もっと君が小さな頃、私は君をここに連れてきた。
 同じように、私がタオルを頭に乗せてさ。

 それは、多分、ひとつ前の私の記憶。
 だから、謝ることなんかないんだよ。

 本当に、よくあることで、私は気にしてないんだから・・・。

('A`)「あ゛―――・・・」

ζ(゚ー゚*ζ「そろそろ疲れた?」

 私は白猫を撫でながら、ドクオを見た。

('A`)「いや、そうじゃなくてさ」

ζ(゚ー゚*ζ「?」

147同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:16:03 ID:3O1ucA/E0
('A`)「変わらないものも、悪くはないか、って」

ζ(゚、゚*ζ




ζ(゚ー゚*ζ「でしょお?」
 Λ Λ
( ^ω^) にゃお


 空の上を、とんびが大きく旋回していった。

 長い鳴き声が、ずっと、耳に木霊した。

***

148同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:17:02 ID:3O1ucA/E0
( ・∀・)「今年も仕事したわー」

( ・∀・)「新しい風吹き入れたりするのもしんどい」

( ・∀・)「来年の夏まで当分休ませてもらおうかなー」

( ・∀・)「吹雪の時は悪いことしたしなー」

 俺は風を自分自身に当てて、空を高く高く飛んでいた。

 見下ろす盆地に、山を挟んで海。

 紫外線が僕を焼き尽くしそうになっていたので、手早く村付近の扇風機を撤去していった。

( ・∀・)「今年はこんなもんで充分か。あとは自由にやってくれ」

 猫人も、人間も、魔女も。

 僕も自由にやらしてもらうから。

149同じ空の下にいるようです:2010/05/04(火) 16:19:15 ID:3O1ucA/E0
( っ∀-)「ねっみ」

 そろそろ寝よう。
 体の結合を解いて、空の、いち、構成要素に・・・。

 同じ空の下、さまざまな人間がいた。
 人間とずれた存在がいた。
 今日もまた、彼らは生きていく。

 皆、同じ空を眺めてる。
 僕はそんな彼らに、少し新しい風を当ててあげるだけの存在。
 それだけの、「風興し人」だ。

 それ以上でも、それ以下でも、ない。

 時が来れば現れるし、必要でなくなれば消える。

 そろそろ、眠りに就こう。

 光が、僕を溶かしていく・・・。




終わり


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